ルマの商い記 -16-
翌朝。
扉横で寝ていたルマが目覚める。
変わらず店内には誰もいない。
ルマは今朝方聞いた会話を再び読み返す。
読み返しながら、内容を精査した上で数枚の用紙にしたためる。
手紙の内容はなんということのないもの。
本人の近況、店の閑古鳥の鳴き声といったなんでもないもの。
今朝方の内容は一切が書かれていない。
宛先は岩の国、ルマの故郷。
故郷に宛てた手紙を、国営市場内の中央監視塔内にある郵便局から送る。
風下の国から岩の国までは何もなければ3日はあれば到着する。
故郷にはルマが弟と呼んでいる男が住んでいる。
ルマの店の商品の全てはこの弟が作っている。
弟は手先が器用で、ルマが買い付けてきた石に細工を付けることを得意としている。
その細工は非常に繊細に作られており、その作風は見るものを惹きつけて止まないという。
それだけの腕があるのもあり、国内では非常に名前が通っていて、ルマの弟に作品を作ってもらいたい業者は多い。
けれども本人はルマの買い付けた石にのみ細工を載せるのがこだわりだという。
本人曰く、ルマ以外が持ち込む石には濁りが混ざっているのだという。
渡された石を見ても、見た目はルマの持ち込んだものと変わらない。
光沢や輝きに関しては、ルマ以外の持ち込んだものの方が良いものも少なくない。
けれども、本人はその奥にある物を感じ取って作品を仕上げる。
だからこそ、濁りや曇が潜んでいると、良いものにはならないのだという。
最初、細工を始めた頃は誰からも依頼を受けていた。
細工を施していくのが楽しくて、毎回違う作品が出来上がっていく、その楽しさがたまらなかった。
ある程度慣れて来た頃、出来上がりに違和感を感じるようになった。
はじめのうちはほんの小さいものだった。
それがどんどんと大きくなっていき、違和感が気になって手に付かなくなってしまった。
なんとかして作品に手を付けたところで、出来上がるのは納得のいかないものばかり。
すっかり意気消沈していたところに加工を申し入れたのが、ルマだった。
ルマが持ち込む石は、どれも平凡なもので、なにもそそられるものがなかった。
けれども一度加工を始めると、その石に何かを感じて、あっという間に作品が出来上がった。
そこでやる気を取り戻したものの、また違和感が起こった。
ルマの持ち込む石に当たると、違和感なく作品作りに取り掛かる事ができる。
そこに気付くまでに幾度となく細工を施してはきたものの、やはり違和感が拭えなかったという。
この違和感は、ひとつ作る度に重なっていき、最終的には作品に手が付けられないほどになってしまった。
それからはルマの持ち込む石にのみ作品を手掛けるようになっていったという。
ルマは弟に宛てた手紙で、作品が3つは売れたことを報告していた。
けれども実際はまだ何も売れていない。
本当にルマには売る気があるのだろうか。
大きなあくびをしながら、ルマは店を開けた。




