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統一戦線記 -ルマの商い記-  作者: 八樹聡
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ルマの商い記 -15-

深夜。

ルマの店の近辺に人が集まりだす。

昼間に上客を迎え入れていた服飾店。

開店の看板は掛けられていない。

店先に数人の人がうろついている。

身なりはこの土地としては相応なもの。

華美でもなく、貧しさは感じられない。

ただ、少なくとも地元民のような民族感はなく、明らかに外様の格好をしている。

この地区は繁華地区から離れていることもあって静まり返っている。

そのせいもあって、人の足音や衣擦れの音も良く聴こえる。

服飾店の扉が開く。

店からテーブルを抱えた主人が現れる。

テーブルを店先に置くとそこを囲むようにして人が集まる。

中央にランタンがひとつ置かれ、何かを話し始める。

ルマの店の位置からでは会話はよく聞き取れない。

集まった者たちは何を隠すわけでもなく、とりとめのない会話を進めているようだ。


外の会話に目を覚ましたルマは店の扉まで近付くと、そこで立ち止まった。

会話に聞き耳を立てて、何を話しているのかをつぶさに聞き取る。

会話の概要を手元のメモに書き取っていく。

その表情は昼間と変わらないにこやかなものだった。

大きな話題が3つあった。

ひとつは最近の商売動向について。

商人たるもの、自らの商売動向は隠しておくものなのだが、ここに集まる者たちはそうではないらしい。

互いに商売品が違うせいもあってか、売れ行きの動向などを交換していた。

国営市場に来るような商売人では珍しい傾向だ。

もうひとつは自国の情勢。

各々の国の状況、情勢の情報交換をするとはこれも珍しい。

国営市場へ来る者たちは情勢が安定している国から来るものたちがほとんど。

情勢不安を抱えている国の者はあまり国外へ出られないことが多いか、あるいは入国時の審査で止められることもある。

これもまた独自のネットワークを築いているのか、情報の交換が行われている。

そして国営市場内では、あまり自国の情報を語らないことが暗黙の了解となっている。

理由としては、自国の状況を安易に話してしまうと、他国に状況が知られ、結果として何が起こるかわからないからだという。

そして最後に風下の国の状況。

集まった者たちは男も女もいた。

そこではいま自分たちが過ごしている状況を細かく交換しあっていた。

区画ごとの治安状況や、辺境警備の状況、入国審査の手順まで。

本当に商人たちの情報交換なのかと思うほど妙な情報だった。

そんな奇妙とも言える情報を、ルマはただただ手元に書き起こしていった。


夜も夜半を越えてさらに深まっていく頃になって、情報交換会は終了したようで、ランタンのそばに酒が置かれた。

さっきまでとは打って変わったように酒を酌み交わしてとりとめのない話題で盛り上がっていった。

そこでの話題はもっぱら自分の店に客が入らないこと。

この区画が静かで過ごしやすいことなど、別の区画の商人たちが話すようなことばかり。

それでも、表情ひとつ変えないルマは扉そばで酒盛りが終わるまでそこに居た。

明け方近くになって解散となり、ようやくルマの表情がにこやかなものから寝顔に変わっていった。

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