ルマの商い記 -14-
店に戻ると、閉店の看板を掛けかえて、開店とした。
開店したといったところで、周囲に人の姿はおろか影すら見当たらない。
玄関先の遠くの方からは賑わいの音が聞こえてくる。
まるで別世界のように静かなこの地区。
公営市場の賑わいと挟まれてエアポケットのようにして存在している。
たまに観光客が迷い込んで来ては、慌てて踵を返していく。
そんな場所でもにこやかな表情のまま、店の奥で座っている。
空は今日も晴れている。
鳶か鷹か、大型の猛禽が大空を悠々と旋回している。
その姿を見上げているルマの姿。
傍目には商いをしているようには到底見えない。
たっぷり昼過ぎまで、そのままで過ごしている。
本当に売る気があるのだろうかと疑問に思うほど、ルマは悠然と時間を過ごしている。
誰が来るわけでもない。
昼頃をだいぶ過ぎた時になって、ようやく干し肉を少しかじった。
昼食なんていつでも良いのに、なぜか太陽が真上にいる頃だけは避けるようにしている。
遅めの昼食を終えると、再び店番に戻る。
戻ったところで、誰が来るわけでもない。
ただただ、店先と店内を行ったり来たりしているだけ。
店内に並べられた商品はどれも艶良く輝いている。
仕立ても仕上げも良く、大通りで売られているものと遜色ない。
価格は場所のせいもあるのか、若干抑え気味になっている。
ただ、それも手に取られなければ売れることはない。
迷い込んでくるような一見さんが現れるなんてことはあるわけがない。
それなのに、あえてこの場所を選んでいる。
そこにはどんな理由があるのか。
ルマの笑顔を伺うに、何も考えていないようなまっすぐなにこやか顔で過ごしている。
日暮れ時になっても、この様相は全く変わることがなかった。
三件向こうの服飾店には、常連らしき客が入っていったこと以外に周囲にも変わりはない。
服飾店から出てきた客は慣れた手振りで、荷物運びに購入した荷物を任せている。
服飾店の店主も、店先までお見送りをしている。
客のほうも互いに礼を交わして去っていった。
荷物持ちは荷車に乗せた荷物を引いて、ゆっくりと去っていった。
その姿をルマも見送っていた。
羨ましさや悔しさを微塵も感じさせず、にこやかな顔でその様を見守り続けていた。
何の思惑があって、あるいは何の意図があってこの場所なのか。
ルマの表情や動向からは、何も伺い知ることは出来ない。
ルマは再び店の中に消える。
店内でもにこやかな顔で、店奥に座っているだけ。
日が暮れて、夜になる。
この時間にもなると、この地区は静まり返る。
公営市場の賑わいもだいぶ落ち着き、国営市場は賑わいが深まる。
近所の店は夜の市場へと消える準備のためか、そのほとんどが店を閉めている。
そうして何も動くことなく、国営市場での2日目は終わっていく。




