ルマの商い記 -13-
国営市場へ向かう道すがら、ルマは干し肉屋を見つけた。
干し肉屋といった類の店は国営市場ではほとんど見られない。
主に保存食といったものについては、基本的に美味しさでは一段落ちるという評がもっぱらのためだ。
満腹にも関わらず、どうしても気になって、店先に顔を突っ込む。
「おはようございます」
にこやかに挨拶すると、店主も笑顔で答える。
「おはようさん。
まだ準備中だけど見ていくかい」
えぇ、と答えながら店の奥に入っていく。
店主は準備中とは言いながらも、すでに開店準備は整っているような感じがある。
聞いてみれば、魚市場の開店と同時に干し肉の漬け込みなどを行って、今はその休憩時間だったという。
普段ならほとんど人は来ないので開けっ放しにしていたということのようだ。
納得ついでに細かく訪ねてもよくないし、店主の邪魔にならないよう静かに店内を物色する。
店内には様々な干し肉が吊るしてある。
漬けだれの違うものや、干し方の違うもの、もちろん肉の種類も違う。
さらには魚を干したものもある。
あまり長居してしまうと店主に悪い、と少し早めにいくつかの干し肉を選んだ。
「では、これらをください」
選んだのは近場で取れる草食獣のものと、肉食獣のものをひとつずつ。
干し肉の専門店として営業しているだけあって、品揃えは充実している。
本来ならもう少しゆっくりと見たかったが、長居するのも、と手早く選んだ。
選んだ基準は味がわかるものだということ、それなら少なくとも間違いはない。
小動物を捌いた干し肉も気になったが、朝からの冒険には躊躇が生まれてしまった結果、無難な選択になった。
その代わりの冒険として、ルマの経験では珍しい魚を干したもの。
味はわからないが、見た目がとても美味しそうだったので、思わず手にしていた。
店主から提示された金額はルマの見立てからすれば妥当なものだった。
支払いを済ませて店を出ようとしたところで、店主から声をかけられた。
「はい、なんでしょう」
ルマが振り返ると、店主が小さな袋を渡してきた。
中を覗くと、小さな干し肉のかけらがいくつも入っていた。
「試しに作ったみたものだけど、よかったら食べてくれないか。
どのみち捨てるだけだからね。
朝早くから来てくれたから気分が良くてね」
はにかむ店主の笑顔に、ルマも驚き顔から笑顔になる。
公営市場には、こういった人情のやり取りがあるから、ルマはこの市場がとても好きなのだという。
にこやかな顔が、いつにもましてにこやかになっているのがわかる顔で歩いていく。
ほどなくして国営市場の通用門に到着する。
守衛に書類を見せて通過を促される。
せっかくなので、と守衛所におすそ分けをしたことを伝えると、守衛も笑顔になった。
どうやら今回の守衛は干し肉が嫌いではないようだ。
良い気分になりながら、店に戻った。




