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統一戦線記 -ルマの商い記-  作者: 八樹聡
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ルマの商い記 -10-

翌朝。

公営市場の朝は早い。

その理由は明快で、昨晩海に出ていた船が戻ってくるところから公営市場の朝は始まる。

夜も明けやらぬ時間から港側には活気立っている。

とは言っても月明かり程度しか無いほぼ真暗な空間。

頼りになるの手元のランタンと篝火程度。

火の周りは明るいものの、遠くまでは見通せない。

それでも水平線の向こうからぼんやりとした灯火が見えだすと、市場はいそいそと準備を始める。

風下の国の船の動力は風力と人力。

この時間は港に向けての風が強く吹くため、漁師からは帰り風とも呼ばれている風が吹いている。

その風に目一杯乗れると、無風時の半分近くの時間で港に戻る事ができる。

そうやって我先にと港に戻ると、水揚げが始まる。

水槽に入った魚介類を大網ですくっては市場のカゴに移し替える。

移し替えられた魚は船ごとの札を付けられて競り場に運ばれる。

この頃になるとちょうど夜が明けだし、周囲が明るくなる。

今の時期は日が長い頃合いなので、もうだいぶ明るくなっている。

篝火も用無しとばかりに弱々しい火を炊いていた。

空が白み始める頃合いになると、競り人たちが船札と、箱の中の品物を見定めにやってくる。

そして太陽の姿を確認すると同時に競りが始まる、ここまでの流れはこの市場が出来てから変わることなく連綿と続けられている。

一通り競りが終わって、箱の中身がそれぞれの競り人によって持ち帰られると、港は再び静けさを取り戻す。

するとそのすぐ向こうにある生鮮市場に喧騒が移っていく。

そこには先程競りに掛けられた魚介類はもちろん、新鮮な野菜類も並んでいる。

肉はというとこの区画から少し離れた食肉区画に並んでいる。

どれも見た目に鮮やかで、しっかりとした品であることは間違いない。


公営市場の朝の活気を目覚ましにして、国営市場も目を覚ましはじめる。

深夜営業を行っていた店は港の始まりに合わせて眠りについてはいるものの、もう目覚めの時間。

国営市場内にある早い営業を始める店舗が続々と店を開ける。

主に飲食店が多い。

近場にある国営宿や、市場側の宿からの食事目当て客を取り込もうという戦略だ。

この時間、市場は最も美味しい匂いのする時間となる。

確かに昼間の方が露店売りの食品もあるので匂いはする。

だが、その時間には食品以外にも香り立つものが並べられているため、混沌としやすい。

反面この時間は、純粋に食べ物の匂いだけが充満する空間となる。

たとえひとつの店舗で満腹になったとしても、ものの数歩で美味しい匂いにやられて空腹になるとも言われているほど。

それほど国営市場の朝はとても味のある場所なのだ。

国営市場は確実な美味しさが提供されている。

対して公営市場は安心出来る美味しさが提供されている。

国営市場のような香り高さや派手さは無い。

ただし、魚の焼ける匂いや、肉が焼けている香ばしさ、野菜の煮物の香りといったような、間違いの無い安心感が匂いからわかる。

何よりも、国営市場に対して2割から3割は価格が安い。

それもそのはずで、公営市場は地元の住人が経営しているため地代が掛かっていない。

それに仕入れも公営市場から行われているため、驚きの価格が提示されている。

外国からの観光客も、この安心出来る味を目当てにして公営市場に通う者も多い。

そして国営市場内に居を構える店主たちもまた、ここの食事を生命線としている者が少なくない。

それだけ味や価格がしっかりしている。

だからこそ、毎日来ても飽きることがなく、根強い反響が多い。

公営市場には食事を出す店だけでもゆうに20は越えている。

自分のお気に入りを探すのもまた、公営市場を楽しむことのひとつである。

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