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お題シリーズ

祭り 帰郷

作者: 仲仁へび
掲載日:2020/10/12




 久しぶりに地元に帰る事になった。


 そこは、特産品も美しい景色もない、大した特色のない町で、今にもさびれそうな町だ。


 人口は年々減少の一途。


 近いうちに消滅してしまうかもしれないような地域。


 そんな町に戻ったのは、祭りがあるからだ。


 子供の頃は、この何もない町で育ってきた。


 けれど、祭りだけはほんのちょっと贅沢に豪勢に行うものだから、妙に記憶に残っている。


 忘れられなかった。

 ふとした瞬間に思い出して、こうして足を運んでしまう。


 だから、毎年その時期になるとつい故郷を訪れる。


 祭りの会場に向かった。


 準備は着々と進んでいるようだった。


 テントが設置されて、飾りつけも意外としっかりこなされつつある。


 町の老人たちが、足腰をいたわりながらゆっくり作業しているのが見えた。


 きっとあつ数時間後の今夜には、町一番の催しものになっているだろう。


 だからそれまでは、たいして見るところもない小さな町を、ぶらぶら歩きながら、暇つぶしする事にした。


 子供の頃にさびれていた商店街は、さらにさびれていた。


 元から人が少なかった地域は、建物がとりこわされ、さらに過疎化が進んでいる。


 そこそこ売れていたデパートはガラガラで、人の数が少ない。


 町一番の人気を誇っていた公園は、今は草がぼうぼうだった。


 未来が見えるような光景だ。


 予言師や占い師なんて必要ない。


 ここはもう終わる町だった。


 息絶える時がすぐ近くなのだと感じてしまう。


 きっとそんな閉塞した空気が嫌だったのだろう。

 先が見えている世界に残るのが苦痛だった。


 若者の流出はとまらず、結果人口は右肩下がり。


 もう半世紀もしたら、町自体がなくなってしまうように思えた。


 そんな町をぐるりと見渡して、会場へ戻る。


 準備は終わったようだ。


 出店がぽつぽつと営業し始める。


 町を存続させるにはお金がかかる。

 けれど、ここは人がいない町。

 入るお金がないのだから、存続にお金をかけられるわけがない。


 この祭りだって、お金がかかるだろうに。

 なぜか今だにやり続けている。


 聞くと、地元の住人が費用を負担しあって行っているそうだ。

 年金とか、へそくりとかそういうのを使って。


 祭りの出店を順番に見て回っていく。


 小さい頃にお世話になった近所のおばちゃんは、古服を安値で売っていた。


 近所にいたおじちゃんは、金魚すくいでおまけをしてくれた。


 いつも遊んでいた公園。その近くに住んでいるお兄ちゃんは、足腰が弱くなったため、休み休み会場の証明やBGMのラジオを調整していた。


 誰も彼も知り合いばかりだ。


 やがて、お祭りの時間が終わる。


 実家で一泊して、朝町を離れることにした。


 昨日それなりににぎわっていた場所は、いまはもうただのさびれた場所でしかない。


 ほんの一瞬。

 花火の閃光のようににぎやかしくなった場所は、あと何度輝けるのだろう。


 感傷にひたりつつも、その場所に留まる意味がないので背を向けて歩き出す。


 きっとここは、時期に地図から消えるだろう。

 

 それでも、消えてなくならない思い出はあった。


 ひょとしたらこのお祭りは、町が消えても、人の心に残り続けようとしている結果なのかもしれない。


 すべては憶測にすぎないけれど。



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