6話
鬼族の門をくぐると門と防壁はヨーロッパ風の見た目なのに中の家屋は和風で鬼族の服が和服なのにも納得がいった。
「あの、何重かになっているのが城か?」
「はい、私たちの王があの城で待っています。」
王か、鬼族の王はどの程度の強さを持っているのかな?
「そうか、なら先に一人送っておけ。そうすれば突然の訪問だが…ちょっと待て、お前らも含めてだが…子供達にもやはり食料が足りて無いのか?」
俺の視線の先にはこちらを建物の陰から見ている。鬼の子供たちがいてどの子供も体が痩せていて骨がかすかに浮いて見えるぐらいには痩せていた。
「はい、食料は最低限しかなくて生きていくのがぎりぎりなぐらいです。」
「それは、単純に足りて無いのか。王が搾取しているかのどっちだ?」
俺がそう言うと悲しそうな顔をして。
「王はむしろ自分の食料を子供たちに与えています。」
「そうか、単純に足りていないのか…他の種族に搾取されているのか?」
俺を案内している鬼が俺の目を見て…
「人族に我々は定期的に食料を納めています…襲わない代わりに出せと…けど、盗賊の恰好をした人族の兵士達に襲われ続けて私たちはもう…全滅寸前になりました。」
「そうか、人族が憎いか?」
「いえ、人族ではなく…ヒルデン王国が憎いだけです。」
「わかった。では、王には少し遅れていくと伝えてくれ…黒恵…聞こえるか?すぐに国に戻り食料を赤狼騎士団に運ばせろ…黒狼騎士団はこの街の近くの盗賊を皆殺しに…白狼騎士団は運ばれた食料を調理してこの街の者に振るまえ…ヴォイスは…ちょっと待て…」
俺の懐に入れているものが振動する。それを取り出す。
「なんだ?ドロイ…」
『黒恵殿から連絡が来た…食力はいつも通り赤狼がもっていくぞ?1か月分じゃから十分じゃろ?白狼は調理で黒狼が周りの盗賊や攻めて来た人族の殲滅と士狼は道づくりと物資の運搬で桜狼は治療者の派遣と医療物資の運搬で青狼は結界師の派遣でいいかの?』
「完璧だ…さて、5分でできるだろ?」
俺がそう問いかけると
『何を申されるか…王が鬼の町に行った時にはもうすでに近くの森にはそういう風に準備を終わらせているぞい?』
「なら行動を始めろ…そうそう、現場の指揮はヴォイスに任せるいつも通りだから飾りでも大丈夫だろ…では、あとは任せる。」
『かしこまりました。』
ドロイとの通話を切ると…
「大将…俺が現場指揮ですかい。では、早速展開します」
それからは、二分で食料を配る準備や敵対する者の殲滅が開始された。
「さて、王の元に向かいましょう…これで、カードが増えた。」
俺は、あくまで恩を売るためにやったと目の前の鬼に告げてさっさと城の方に向かって歩き始める。
その案内役の鬼は慌てて俺についてきていた。そして、子供達がお礼を言ってきたので…手を振って城に歩いていった。