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しにがみさんとせいじょさん。  作者: 夏目唯々
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Memory.1-6【聖なる少女に手向ける祈り】

「まあ、それならあの子はもう少し先に葬儀になるのか…。」


 自分の胸に何かが刺さった気分だが、それを上回るほど自分の気になっていた事が解決してスッキリとした気分だ。

 理解を追いつかせようとするよう息を吐いた俺に、少女は言葉を丁寧に選んでいる様子だった。

 そして近くの引き出しから少し大きめの袋を思い出したかのようにくれた少女は、目を伏せて言葉を続ける。


「明後日、手続きを済ませた両親と共にリリが式を執り行う事になっているのです。」


「お前が?普通神父とかじゃないのか?」


 …まるで、自分のしていることを知られたくないような。少女の物言いにはそんな印象さえ受けて、聞いてはまずい事だったかと少女の顔色を見てさりげなく伺いを立てた。


「普通はそうなのですが、最近は皆リリに送って貰えば幸せになれると考えているようです。

 亡くなった方に一番近い方でも、そうじゃない方でも祈っていただける。それだけで幸せだとリリは思うのです。でも…、それでもリリにしてほしいとあれば勿論喜んで請け負いますけどね。」


 少女はへらっと笑うと、少し思い詰めたような表情を一瞬みせるものの、またすぐに明るい表情に戻った。

 「喜んで請け負う」と、そう言った少女を頼もしく思いながらも俺は何故かこのままほっておくことは出来なかった。

 死んだ麻里という少女にも興味はそこまでなかったし、俺にこの先帰る場所もなければ現在逃亡中で隠れる場所が欲しかった。ここは恰好の場所だった。


 そんな外的要因はあるが、俺はどこか寂しそうで、悲しげな瞳をするこんな奥地の教会で生活している少女の力に、こんな俺でもなれるのなら。


 もしの可能性があるならば、…こんな俺でも傍にいる事が赦されるなら。


 俺は無謀と分かっていてもどうしても己の意見を口に出してしまおうと、吐き出してしまおうと考え付いた。

 それは単なる俺の自己満足で、少女の迷惑にしかならない言葉。

 自分自身で、勿論興味もあった。心配もあった。何より、何度考えてもこんな弱々しい表情を浮かべながら強がる一人の少女をほっておくことなんて出来る訳もなかった。


「……俺を明後日までここに置いてくれないか?明後日以上なんて図々しい事は言わないから。

 お前が執り行う式をこの目で見させてほしい。…頼む。」


___俺は殺人犯の癖に何を言っているんだ。

   このままここに滞在してもいい事なんて何もない、迷惑を掛けるだけだ。

   第一、こんな血に塗れた手で、彼女を守りたいなんて、傍にいたいなんて烏滸がまし過ぎる。


 でも、俺なりにずっとこの短時間で考えて考えて、ない頭で何度も考え抜いて何度も違う最良の結論に辿り着いたが、俺は最終この結論に辿り着くしかなかった。

 勿論、俺には滞在費として払うお金もなくて、無茶を言っているのは重々承知で頭を下げた。


 心配だ、とかほっとけない、とかそんな俺個人の感情なんてきっと少女は求めていないし、知ったところで迷惑極まりない話だろう。

 ……だから、せめてもう少しだけ。

 そう願った俺に、少女は考えなしなのか気にしていないのか、深刻な声になる訳でもなく変わらぬ調子で笑った。


「リリはここに一人で住んでいるので、明後日と言わずいつまででも好きにしてくださいな。」


「いいのか?こんな俺でも、ここに居て。」


「何も貴方の事を知らないリリにそれを言いますか?」


「……それを言ってしまえば俺も同じだな。お前の事何も知らない。」


二人で顔を見合わせて笑うと、俺は言い表せられないような不思議な気持ちになった。

これが幸せなのか、罪悪感からなのか。

どうか神様、赦してくれなんて言わないから。せめて少しだけ。

少しだけでいいから、俺にこの甘い日々を味合わせてくれ。

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