序章 呼ばれてしまった男
はじめまして。なろうへの投稿は初となります。寿司四貫と申します。
この度、流行の異世界小説に自分も挑戦する気持ちでこちらへの投稿とさせていただきました。異世界転移・チート能力という要素を踏まえつつ、自分好みのストーリーを自由に描くことにします。よろしければしばしお付き合いくださいませ。
第一回目は短いオープニングだけをごゆるりとどうぞ。
カラスが鳴く茜色の空の下。今日の講義を終えて学校の敷地から出た俺は、ポケットから煙草とライターを取り出す。慣れた手つきで咥えた煙草の先っぽに火をつけ、ライターをポケットへ。それと入れ替わりで携帯灰皿を手に持ち、歩道と車道を区切る防護柵に尻を乗せる。椅子にするには微妙に高く不安定、もたれるには低い。
微妙な居心地を感じつつ、ゆっくりとニコチンを嗜む。今日のことを思い返し、煙と一緒にため息を吐いた。なんとも退屈な一日だった。それはいつものことなのだが、いつもこんなことが続くということが問題だとも言えるか。
義務教育を終えて高校受験も成功し、大学もそこそこのところに受かり、単位も今に至るまで必要な分は取ってきた。空いた時間はバイトに費やし、実家である我が家でゆっくりと休み、また次の一日を始める。その繰り返し。今日も例外ではなかった。
成績は平均値を綺麗になぞり、特に突出した能力はなく、特技もこれといってない。バイトである仕事がバリバリできるわけでもない。人並み以上にできることがあるにはあるがそれも凡人レベルで、自慢できることではない。上には上がいるということは重々承知している。かといってそれを嫌って努力するほどの気概はないため、ただただ淡々と毎日を消化する……そんな人生を二十年過ごした。酒と煙草が許される年齢になった。それが新鮮な気持ちにつながるかと思ったが、そうでもなかった。まあ酒も煙草も成人前にやって――いや、やめておこう。壁に耳ありという言葉もある。
空を見上げ、空想にふける。どうせこの先、社会人になっても同じなんだろうなというつまらない空想。明るい未来は何も見えてこない。俺も昨今話題になっているブラック企業のような、生きる価値すら見出せないようなこれまたつまらない会社で働くんだろう。
……やはり、どんでん返しなどあるはずもない。そう確信し、灰皿で煙草の火を消した。
今日はバイトも入っていない。どこか寄り道でもしていこうか――そう考えて体を起こしたその時、違和感を覚える。
「……あれ?」
明るい。空が明るい。まだ日は沈んでいないのだから明るいという表現は間違っていないのだが、そうじゃない。
夕焼けの時刻には見られない、白い光。一筋の光が空から伸びている。それだけならまだありえなくもないかもしれない。俺だって、気象や気候のことを全て知っているわけじゃない。しかし、だ。
「……なんで俺を狙ってんのかね、この光は?」
スポットライトじゃあるまいし、何故に俺を照らすように空から下りてきているのか。奇妙な光だ。どういう自然現象なんだか。理屈はともかく、たまたまだろうな常識的に考えて。光が嫌なら俺が離れればいい話。
ま、ここで暮らすわけじゃないんだから離れるくらいどうってことない。一服も済んだことだし、行こうか。
そうして俺は歩き始めた。そこまでは『いつも通り』だったのだが。
違和感は歩き始めて数歩、いや数十歩か。よく覚えていないがともかく、気づいた。
茜色の空から差し込んでくる真っ白な光。その光が、俺を追いかけてくる。俺を照らし続けている。
俺がそれを確信した時にはすでに、俺の意識は消えていた。