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腹黒王子

 初恋とも言えるフランに勢いのまま求婚し瞬く間にフラれた失意でひとり葬儀にでも参列しているような様相で落ち込むフェデリコを発見したドゥイリオは頭を抱えてしまった。


 今回の嫁取りの大船団を率いるリーダーであるラーズは海から引き上げた少女に惚れたらしく、気を抜けば惚けていてこれからの王妃陛下との謁見に不安が残る。


 しかし、フェデリコは有能で他国の王子であるドゥイリオの元までフェデリコ・バートロンの名前は聞こえるほどだった。


 まだ成長期に差し掛かったばかりドゥイリオは未熟な自分を理解していたし、ラーズがあてにならなくても大人で有能なフェデリコがいればなんとでもなると慢心していた。


 そう、慢心して油断していた。


 まさかフェデリコが恋煩いと失恋で使い物にならなくなるなど誰が予測できようか。


 放心しているフェデリコを叱咤し、謁見に相応しい服になんとか着替えさせ、ドゥイリオはフェデリコをこのような状態にした原因と距離を詰める。


「フラン殿!」


「こっ、これはドゥイリオ殿!? どうかされました?」


 焦りをひた隠しながら赤面しこちらを見るフランにドゥイリオは心の中で嘆息した。


「フラン殿は心に決めたお相手がいらっしゃるのでしょうか?」


「なっ、何を」


「答えてください、大事な事なんです!」


 視線を彷徨わせながらあ〜とかう~とか唸ったフランは小さく首を横に振った。


「おりません、私には兄がおりますので家は兄と兄嫁が継ぎます。 甥も昨年産まれましたので跡継ぎの心配はないのですが……」


「ですが?」


 言いよどんでいる様子のフランに笑顔で先を促せば何かと葛藤したあと観念した様にため息を吐いた。


「見合いをした男性に全て断られました……」


 ドゥイリオはうなだれるフランに首を傾げた。


 フランはメイロウ大陸の基準で言えば体格は申し分なさそうだし、顔も整っているように感じるのだ。


「なぜ? フラン殿はお美しいと思いますが」


 フランと話しだした事で背後からフェデリコの恨みを込めた視線を背中に受ける。


 男の嫉妬はみっともないなと思いながら言えばフランは更に挙動不審になった。


「私はこのコレリアン国の湾岸を護る海軍長を陛下より拝命しています。 海軍は女性の憧れの仕事ではありますが、いつ命を落とすかわからない危険な仕事でもあります。 家を継ぐ男性にはいつ死ぬかわからない女より長く自分と家族を守る事ができる女性を求めるため、海軍関係者だと言うだけで忌避される事が多いんです」


 諦めまじりに白状した。


「それは長を任命された後ですか?」


「いえ、平海兵だった若い頃に連敗し玉砕してから見合い自体諦めましたから、私の様な年増は後妻なら貰い手もあるかもしれませんが、新妻は無理でしょう。私は後妻は嫌なのでどうしても若い者には忌避されますね……だから結婚は諦めておりますよ」


「諦めてしまうのですか? 出来ればうちの独身男が貴女に恋い焦がれて使い物にならないので責任を取って頂きたいのですが」


 ドゥイリオが視線で歩く屍状態のフェデリコを示す。


「いや、でも……」


 視線を彷徨わせるフランの手を優しくとり、特大の猫を被ってもっとも効果的に作用するように、僅かに首を傾げて自分より身長が高いフランを上目遣いで見上げる。 


「フラン殿のように美しい方が独身でいるなど世界の損失です! フェデリコ殿はああ見えて一途な男ですし、もしよそ見をするようなら私が天罰を下してやります。 フラン殿、フェデリコ殿の事を少しだけ貴女の生涯に寄り添う伴侶として考えていただけませんか?」

 

 女王陛下との謁見を万全のものにするべくドゥイリオはフランにフェデリコを押し付ける気満々で自分の容姿をフル活用することに決めた。


 傾国級の美男子に見詰められると言う事態に思考回路が焼き切れたフランは真っ赤に全身を染め上げ、無自覚に「はい」と返事をした。


「フラン殿、ありがとうございます。 フェデリコ殿! フラン殿がフェデリコ殿の奥方になってくださるって!」


 大仕事を成し遂げたドゥイリオがフェデリコに声をかけると、素早く駆け寄り自分より少しだけ背の低いフランを横抱きに抱き上げた。


「フラン殿! ありがとうございます! 必ずや貴女を幸せにいたします」


 幸せを全身で体現するフェデリコに焦るフランにドゥイリオは深く頭を下げる。


「ユナス大陸への嫁入りありがとうございます」


「えっ!?」


「いやぁ、フラン殿が快くフェデリコ殿の伴侶となることを了承していただいて良かった、フェデリコ殿は果報者ですね、こんなに美しい奥方を得ることができたのですから!」


 フランが断れないように周りを固めつつ、自分の思う方向へ巧みに話の流れを持っていくドゥイリオの手腕にラーズは感嘆した。

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