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祈りの鐘

 出港の時間が刻一刻と迫る中、ラーズは自室のベッドの敷き布団を撫でていた。


 ほんの一月前、海から掬い上げたリンカが寝ていたベッドは今は温もりなどなく、ひんやりとした感触をラーズに伝えていた。


 船に戻り次第自室へ篭ってしまったラーズをフランを連れたフェデリコが強引に甲板へと引きずり出す。


「ラーズ殿、貴方はかりにもこの度の大船団の長だ。 リンカにフラレて辛いのはわかるが我々は預かった花嫁を無事に連れ帰らなければならない、虚勢でいいから港を離れるまでしっかりしてくれ」


「あぁ、わかっているよ……」


 ラーズは外交で作り慣れた微笑みを貼り付ける。


 しかし生気のない瞳と表情が、一致しておらず今にも海に飛び込み霞となって消えてしまうのでは無いかとフェデリコは危ぶんだ。


 既に花嫁を乗せた船が次々と湾岸から離れ沖へと向かっている。


 ラーズの乗る船が最後に出港となる。


 フランと共にフェデリコが自分の船へ戻っていった。


 ラーズは船尾に取り付けられた大きな『祈りの鐘』の前に立ち、航海安全を海の神に祈る。


 ラーズの船以外が全て沖へと出たことを確認し、鐘の上部に繋がった太い縄を力いっぱい引き下ろすと、カラーン、カラーン、カラーンと三度高く澄んだ鐘の音が響き渡った。


「出港!」


宜候ヨーソロー!』


 ラーズの声に船員達が大きな声で答えると閉じられていた船のマストが降ろされて風を受けバンと音を立てて張り詰めた。


 ラーズは陸に向けて自国の敬礼である右手を握り胸元へ当てた。


「さようなら……リンカ……」



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