やり残したこと
周りは完全なる闇、何も見えないが意識はある、そんな状態がしばらく続いて、俺はようやく自分がどういう状況なのか理解した。「、、、死んだのか」 驚きもしなければ悲しくもなかった、そりゃそうだ。それが俺の任務なのだから。「死ぬ」ことを強制された日々、それからようやく解放されたんだと逆にせいせい
した。それにしても死んだのは俺一人ではないはずだ、声を出してみようと思ったが出ない。周りは吸い込まれそうなほど真っ暗で少し心細くなってきた。人は死ぬと「成仏」というものをして、あの世へ行くものらしいが俺はもう成仏しているのだろうか。体を動かそうとしても身動き一つ取れない、、、、いや、そもそも体なんてもうないのかもしれない。いつまでもこんな退屈なところにいなければならないのか、、、軽く絶望した時に声が聞こえた。「、、、だせ」 生きていたときのような耳から聞く感覚ではない、頭の中に直接響いてきた。声の主は誰なのか。「、、、だせ」 「、、いだせ」 聞き取れなかった声が少しずつ鮮明になっていく、だが声が全部聞こえる前に俺は叫んだ。「あんた誰なんだ!もしかして神様ってやつか?もしそうだったら俺を早く成仏させてくれ!」 叫んだといっても口をあける感覚はなく、頭の中で怒鳴った感じだった。「おい!聞こえるか!?俺を成仏させてくれ!」 、、、、、返事はない。俺は痺れを切らして頭の中で怒鳴った。「おい!聞いてんのか!早く成仏させろって言ってんだよ!!俺はもうこんな世界まっぴらごめんなんだよ!!」 俺の感情の高ぶりが最頂点に達したと同時に耳元で声が聞こえた。
「思い出せ」 それは男か女かもわからない不思議な声で、俺の頭の中へ刺すように入ってきた。心地よい痺れが頭の中を駆け巡り、しばらく言葉が出なかった。
姿の見えない声の主に俺は頭のしびれでとぎれとぎれだが再度言った。「じょ、成仏、、させろ、、、」 「ならん」 今度はすぐに返事が返ってきた。「な、なんで、、、」 「お前はまだやり残したことがあるだろう」 すべてを知っているかのような物言いに圧倒されて声が出なかった。 「思い出すのだ」 頭の中に響く声に背中を蹴られ、不本意ながらも俺はここに来るまでの経緯を思い出そうとしていた。