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「やっぱり、赤やピンクの色彩が、多いな」
なんとか、問題なく、門を潜ることができた。
その前が、問題だらけだったからか・・
そして、ここは、演出であろう、園内まで通じる暗い通路の中である。
持たされた、タブレットを見ながら、抜けた先にある数々のアトラクションの予習をしていた。
「お兄ちゃん!わたし!ここ行きたい!!二人で、違う通路を通って、ジャマーの邪魔ををかわして、塔の上で出会うの!ロミオとジュリエット効果だって!!」
「茨の檻に閉じ込められた、お姫様の役か~、座ってるだけでいいのだったら、私にもできるかも・・・アンダードッグ効果っていうんだ~あえて、か弱い自分を見せる」
「ゲ・・ゲ・・ゲインロス・・ギャップ萌え・・なんじゃそりゃ。虎のかっこうができるんだ。う~ん、ここだ!!」
「・・・・・」
なんか、それぞれ、今さら行く必要があるのかと言う項目を選んでいる。
引っかかるのか、偶然なのか・・
「て・・定番の、吊り橋効果の、ジェットコースターからにしませんか。ほら、穴場というか、空いてるみたいだし」
一志は、自信なげに提案をする。
いつも、そういうところに振り回されている一志の精神が、拒絶反応を起こしたのだろう。
「イヤよ!!ここには、お兄ちゃんと、もっと恋人になるために来たんだから!そんな、いつでも乗れるものじゃなくて・・よーし、そこまでいうなら、見つけた!電車ごしに、チュウができるCHUCHUトレインとか」
「言ってなーい!」
美少女とキスできる高揚感より、取り返しのつかないことをしてしまいそうな怖さが、大きかった。
「じゃあ、私は、控えめに、人魚姫の格好をして、一志君に、だっこしてもらうの。そのあと、お話し通りに、海に放していいから」
「却下です!」
こんな人魚を海に放したら、それこそ、男共がピラニアのように群がってしまう・・それ以前に、一志の理性がもたない。
「ショットガンルームってあった。なになに・・きほん時間、二時間。延長、一泊OK。かんぜん防音。せいそうロボットかんび・・ショットガン、撃ちまくる部屋かな?よし、ここにしよう」
「アウト!アウト!アウトーーーッ!!!」
まさに、いたれりつくせり・・・にも、限度があるだろ!
絶対!どこからか、クレームくるぞ!
「あっ!よく見たら、隠しファイルだ。よく見つけたな・・いや!それよりも、必要なのは、年齢制限だろ!!」
この物語は、フィクションです、このような、テーマパークは、実在しません・・・たぶん。
「アイリちゃん、『ショットガンウェディング』って、言葉があってね・・なんて言えばいいのかな」
茉璃香が、控え目にフォローを入れようとしたが、思いつかずに、どもってしまう。
「できちゃった婚!」
バキャッ!!!
タブレットが、割れた。
どう、ごまかそうかした言葉をアイリが、思い切り、口にしてしまった。
「女の子が、そんなこと口にしちゃいけません!」
そんな、たしなめるみたいな、一志のしぐさが、アイリのよけいな琴線にふれたみたいだ。
「キーーーーッ!!子供あつかいしたな!バカにして!!よーし!そこまでいうなら、いってやるーっ!」
「キャーーーーー!おまわりさーん!!!」
これは、一志の悲鳴である。
かなり、動揺しているようだ。
「アイリちゃん、ちゃんと聞いて。こういうのはね。年齢が問題じゃないの。二人が、どれだけ幸せなるかが大事で」
「そ・・そ・・そうそう」
いや、まず、年が大問題だと思うが・・アイリを納得させるための方便だろうと、茉璃香の言うことに、賛同する。
「勢いで、決めるようなことしちゃだめよ。アイリちゃんなら、これから、いくらでも、そういうことする機会があるんだから。本当に誘惑されたって、一志君が受け取ったら、どうするの?」
「アンタが、いうな!」
「・・・・・」
子供に、つっこまれてしまった。
そうでした・・・環にたしなめられて、いくらか考えることはあったが、茉璃香こそが、そう思われてもしかたないことばかり、やっているのだった。
「・・私は、いいの。もう、とっくに、心に決めているんだから。一志君に、何時なにされても、素敵な思い出にできる自信があるんだから」
「けっきょく、自分が、ヤリたいだけかーっ!」
「だから!女の子が、そんな言葉を使っちゃいけません!」
「なに!?お兄ちゃんと、素敵な体験なの?じゃあ、わたしがいく!!お兄ちゃんと、その『ショットガンルーム』に、わたしがいく」
「お前が一番、たち悪いぞ!」
他に聞いてる人がいないとはいえ、とんでもない会話だった。
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「うぉのれ~~~!!!かずし~~~~!!この世を滅ぼす、魔王め~~~!」
「もはや、一刻の猶予もない!僕たちで、世界を守るんだ」
いや・・どうやら、耳を傾けてるものがいたようだ・・・
よりにもよって、この世で、一番、聞かれてはいけない二人組に・・・
どうやって抜け出したかわからないが、もう、この二人こそが、地上を征服しに来た邪悪の権化に見えるほど、嫉妬のオーラをまとっていた。




