おしまいおしまい
「いや~~~~~~~~~~・・、それにしても、俺の周りも、ずいぶんと賑やかになったもんだ・・・」
ふと人生の節目に、島で暮らしていたころには、想像もしてなかったみたいな、今の惨状に、一志はしみじみと、そう呟いた。
・・・・・日々の平穏こそ願う少年にとって、それが、自虐的なものであることを察してくれる者は、誰もいなかった。
「ア~~~~~ン!!わたし、お兄ちゃんと、二人っきりだけでいいのに!」
「う~~~ん、でも、今の二人の関係で、これ以上、二人っきりというのは・・体面的に、危険なのでなないかしら?ここは、カモフラージュ的な意味で、私たちが一緒にいてあげた方がいいんじゃないかな」
「木をかくすなら森の中だな。そうして、油断させるんだ」
しのぶと茉璃香とアイリが、それぞれ、一志と一緒にいたい胸中を打ち明けた。
これだけなら、賑やかではなく、華やかだといっていいが・・
「そんなカモフラージュがあるかー!!!そんなつつましいこと言いたかったら、その全然つつましくないチチ、抉ってからにしなさいよ!!」
そうつっこんだのは、環である。
チチはおいといて、そこは、同意である。
木や森でなく、フラワーアレンジメントになってしまう。
「なんだ!その、超!!上から発言は!!!まるで、自分はなにもやってませんみたいな!そんなわけねぇだろ!いったい、どんな悪魔と契約したんだ!!」
「その悪魔、紹介してよ!!!」
功一と清孝だ。
季節も春で、一志達、学生にとって、忙しくもなれば、その後、一気に暇になるみたいな時期に、なんとなく集まった連中が、アイリが持ってきた、おかしな機械で、おかしくなっていた。
「そういう季節だし、浮かれてもいいでしょ。本当にお酒ってわけじゃないんだし」
「いえ、限度があるでしょ!」
とても、未成年を交えて展開していい光景でない。
「こうなったら、飲んでやる~」
「いえ、ジュースだけど・・あっ、いいのかな?」
「あたしのオゴリだ!えんりょなくやってくれ」
「中身は違うでしょ。どっから持ってきたの?こんな危険物。なんか既視感あるけど」
どうでまた、あの老人の作だろう。
水を酒に替える・・・みたいに感じる樽なのだが、世間に出回ったら、すぐに、法の改正がなされそうだ。
「とにかく!俺たちのカメラが光るうちは!」
「不埒なマネは!決して許さないぞ!!」
「オマエ等に、言われたくないわ!!!」
そもそも、なんでいるんだか・・
皆、思い思いのジュースを注いで、口にしながら、本音を出し合っている。
「でも、一志くんも、悪いわよ」
そこで、保護者で、一応この場の責任者であるはずの沙江子が、話しかけてきた。
沙江子であれば、一志の心境を正しく理解してくれているのだが、逆に、あおってくるのだから、察してくれる側には入らない。
「こうなっちゃたものは、しかたないんだし。ちゃんと気持ちを聞きたい娘達を知らんぷりするなんて」
「・・・・・」
その通りなのかもしれないが、都会の賑やかさになれない自分から、やっと脱却できたかなみたいな少年には、ちっとハードルが高かった。
「じゃあ、どうしたらいいんでしょぅ・・?」
「それは、一人一人、相手の目を見て、誠実に、話し合うのよ。それぞれ、つらい体験をして、まだまだ、一志くんといっしょにいられる時間が、必要なことを。そうすれば、どの娘も、ちゃんとわかってくれるから」
それは、その通りだと思う。
一志も、他の誰か押しのけてまで、自分がだけが幸せになりたいなんて娘はいない、そう断言できる。
一志は、自分が、すごい果報者に思えてきた。
「その上で、ちゃんと一人一人に言ってあげるのよ。本当に愛してるのは、君だけだよって」
「どこが誠実ですか!!!」
本気で、惨殺エンドだけは、勘弁して欲しかった。




