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柚月しのぶ、奮闘中
「おいしいチョコレート、おいしいチョコレート・・ふ~ん。混ぜ方・・温度・・時間・・トッピング・・・うわ~~~ん!めんどうだーーーっ!・・・・・そうか!チョコレートを作ってくれるロボットを自分で、作っちゃえばいいんだ!」
「二度手間どころじゃないぞ・・」
騒いでる壁ごしに、ついつっこんでしまった。
バレンタインという、世間一般にキャッキャウフフするイベントに、一志には、不安しかなかった・・・
里政茉璃香、相談中
「あの・・」
「ん!?」
「園寺さんに、今度のバレンタインデーのことで、相談というか・・意見を聞けたらと思いまして・・」
「・・・」
環は、一瞬、押し黙る。
その心境は、複雑であろう。
「あるわよ、とっておきのが。これなら、どんな男も喜んでくれて、それで、あなたにピッタリなのが」
「教えてください!」
「全身にチョコ塗って、わたしごと、た❤べ❤て❤ってね・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに言ってるんです!そんな恥ずかしいこと、できるわけないじゃないですか!!!」
顔を朱に染めて、茉璃香は否定した。
「・・・・・・」
ヤル!
この女は、相手の男が望めば、絶対ヤル!
十三秒・・
茉璃香が、考えあぐねた時間である。
自分でからかっといて、なんだが・・
環に、そう確信させるに、十分な時間であった。
乙星アイリ、製作中
「う~~~~~ん」
チョコレートの材料を前に、唸っている。
「あれこれ、考えるひつようは、ないんだよな・・みんな、やってることなんだから・・」
なんか、言い訳がましいことを言いながら、作業に入る。
「こんなの、一番ポピュラーなやつ・・・きざんで、溶かして、型に入れて・・簡単簡単!」
・・・・・二時間後。
「で~~~きた!」
ハートに、『LOVE』と・・
グシャ!!!
「なにやってんだ、アタシは!」
チョコまみれになったこぶしに応えるものは、誰もいなかった・・・
その他・・・・
「・・・・・・・・・・・」
「対象!未だ動きなし!」
「しのぶちゃんの行動は、すべて把握しているな」
「ハイ!まだ、来店でも、注文でも、チョコ、もしくは、その材料となるものを購入した形跡はありません!」
「よし!このまま監視だ。当日・・いや、手渡す寸前まで、目を離すな!」
「了解」
「チョコレートは、そこに込められた愛を理解できる者こそが、手に入れるべきなのだということを一志に教えてやる」
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バレンタイン・・・・・
やり方は違えど、チョコに込める思いは、みんなおんなじ・・・
・・・というわけには、いかないみたいだ。




