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「ふっふっふっ。とうとう、この時が来たようだな・・」
「そりゃ、自分だけ振ってりゃな~」
その後も、なんやかんやあって、功一がゴールまで、あと一マスという地点にまで、たどり着いた。
その執念だけは、認めてやりたいが・・
「あと一振り。あと一振りで、おれの天下が手に入る」
「おお、ついに、われわれの時代が来るのですな」
「聞こえなかったのか?おれの天下と言ったのだ」
「なにを言っているんです?!われわれは、ともに、頂点を目指すと誓い合った仲ではありませんか!?」
「いなことを・・ただ一人しかたどり着けないから、頂点ではないか」
「今まで、苦楽を共にした、ぼくを裏切るのか!!」
「この世に王は、二人もいらん!」
「・・・・・・」
こういうの、なんていったけ?
三文芝居。
見るに耐えない・・意外性もない。
二人の性格を熟知している一志にしてみたら、そのまんまである。
「いいから、とっとと、振れや!」
たまらず、うながす。
まあ・・それでも、こちらにあまりにも不利益なことが起こるようであれば、殴って、気絶でもさせてでも、止めるつもりであったが。
「神よ!おれを祝福しろ!!」
「あーーーっ!」
清隆が、伸ばした手が届かず、サイコロは放たれた。
劇的な言葉のわりには、その場に落とされるみたいに。
コロンと、一回転だけして、その目を出す。
1だ。
「でたーーーーーーーっ!」
盛り上がってるが、もう、そこしかないだろう・・
『ゴール。ライオンです』
「そうだろ!そうだろ!」
『ヒャクジュウノオウ。メスヲチカラデテニイレル・・・ト、オモワレテイマシタガ、チガイマス。ジジツハ、ジョセイジョウイ、メスコソガ、オスヲエランデイタノデス。メスニキニイラレナケレバ、ムレニイレテモラエマセン。ホウロウノタビニギャクモドリ。フリダシニモドル』
「なんじゃ!そりゃーーーーっ!!!」
ドガンッ!
絶叫中の功一を絡まってた清隆ごと、なにか大きなものが吹っ飛ばした。
「あーーーーー・・・・」
開いていた窓から、外に飛び出してくれた。
「ラーテルって、でた。世界一、怖いもの知らずで、ライオンにも立ち向かうって」
二人を吹っ飛ばしたのは、どうやら、アイリが操った、ソファーのようだった。
そういえば、いくら、空気断層があるとはいえ、冬場に、窓を開けっ放しにするものじゃないなと、ピシャンと窓を閉めた。
五月蝿いのがいなくなって、ひとごこちついたところで、一志は、一言つぶやいた。
「ひっでー、すごろく・・」
あれだけの災難にあって、結局最初に戻るなど・・・
市販されようものなら、引き裂いて、製作会社のもとに、爆弾つきで送り返されるレベルだろう。
一志は、あらためて、養父の評価を下げまくったのだった。
「そんなことないんじゃないかな。もしも、みんなで、楽しくプレイしたら、最後に、みんな仲良くなれる。そういうスゴロクなんじゃないかしら」
屈託もなく、茉璃香が、そんなことを言ってくれた。
視界の隅で、なにかメラメラと燃え上がるものが映ったような気がするが、どうでもいいだろう!
「さ~~~て、切りのいいところで、お開きとしましょうか」
「全然!いくないでしょ!!一志くんが、振ってくれないから!今の今まで苛まれて!」
どうやらそのようで、到達した者がでたことで、沙江子はやっと復活されたようだ。
「お兄ちゃんが、ふってくれないから、一回休みが、いつまでたっても終わらなくて!」
そう考えると、少しは、悪いことをしたような気持ちになるが、ただ・・騒がしいときは、とことん騒がしいので、逆に、静かにしてくれたり、母娘で落ち込んだりしてくれてるその時が、貴重に見えたり、愛おしく見えたりしたのは、一志自身にも、説明できない感情だった。
「身をもって、わかっただろ!このすごろくは、危険なの!だから、もう、これで、お~しまい!」
「いいもん!いいもん!お兄ちゃんが、してくれないなら、わたしがなるもん!わたしが、ライオンになって、お兄ちゃんをゲットするもん!」
「バカなこと言うんじゃない!さっきの二人をみなかったのか!命が、いくつあっても、足らんぞ!」
「でも、女性上位っていってたから・・つまりは、そういうことだよね・・」
よけいな人、その三が、ぼそりと、よけいなことを呟いた。
「「「「それだぁ!!!!」」」」
四人の女性陣が、そろって、喚声を上げる
なんで、四人・・?
「わたしが、一番にいったんだからね!わたしが一番になるんだからね!」
「そんなこと言わないで、一志君が、一番になってくれたら、万事解決なんだから」
「大人の女のよゆうか!死ぬほど、ムカつくー!」
「最初っから、二号さん狙いなだけだよ・・」
「まあまあ、一志くん。そんなわけだから、方針が決まったから、振って振って」
「勝手に、決めないで!」
冗談じゃない!
あの惨劇をもう一度、繰り返すのか。
ここは、なにがなんでも、ごまかさなければ・・
「ああっ!ニワトリが出た!!三歩進んだら、みんな忘れてしまうんだ!」
「そりゃ、腰抜けのほうでしょうが・・そんな、見え透いた嘘で逃げてたら、そのうち、刺されちゃうわよ」
『ニワトリ。クビヲチョンギラレテ、18カゲツカンイキテイタ、ニワトリガイマス』
「お前ら!五月蠅い!!てゆうか、不吉すぎるわ!!」
「「「「さあさあさあさあ」」」」
四人の女の子(?)に、言い寄られて、詰め寄られて、にっちもさっちもいかなくなって・・・一志の今年の一年も、こんなふうになりそうだった。
「いや~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・」




