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『ナマケモノ。クビガ270ド、カイテンシマス』
「ひべべべべべ・・曲がるか!」
『イリエワニ。カラダヲアンテイサセルタメ、イシヲノミコミマス』
「飲めない!」
『フレンチブルドッグ。オドロキスギルト、メダマガ、トビダシマス』
「ほんとに、飛び出したりしないよな!」
『ハエ。アシニ、ミカクガアリマス』
「おげ~~~~!足の裏の味がーーー!」
『ミジンコ。テキニオソワレルト、アタマガトレマス』
「ほんとに、取れたりしないよなぁ!!」
『ジバクオオアリ。テキニオソワレルト、ジバクシマス』
「ひでぶっ!!!」
「あ~~~ああ。予想はしてたけど、予想以上におもろいことになって・・」
かわりばんこに、サイコロを振って、奇行を繰り返す功一と清隆に、一志は、冷ややかな視線を送る。
あと、ちょっとだけ、動物ってたいへんだな~とか、思ったりしていた・・・・・
・・・・・・・・・・・・・実際に、大変な目にあってる二人を差し置いて。
「動物って、たいへんだな~」
一志の隣で、アイリが、同じ感想を持った。
すると、なにを思ったか、二つの骸の側にある、サイコロを手に取った。
「おいっ!!」
「えいっ!」
いくら、危機感の足りないお年頃とはいえ、それはない。
一志が、止めるのも間に合わず、アイリは、興味の赴くまま、サイコロを振ってしまった。
『ウルフドッグ。キショウガアライノニ、アイテヲミトメルト、トタンニ、アマエンボニナリマス』
「わんわん!すりすり・・・て、なにをする!!!」
「はがっ!」
「やったのは、お前だ!ていうか、まんまじゃないの!」
アイリのこぶしが口にめり込んだ一志に代わって、しのぶが答えて、当然のごとくサイコロを手に取った。
「はから、あめとへって!」
「えいっ!」
再び、止めるのが間に合わず、サイコロが、転がった。
『ウォンバット。アマエンボスギテ、カマッテアゲナイト、ウツビョウニナリマス。1カイヤスミ』
「まんまやんか・・あ~~、落ち込んでしまった」
「だから、止めたんだ」
母娘が並んで、壁に向かって、体育座りしているが・・一志にとって、その姿は、妙にしっくりくるものがあった。
コロコロコロ・・
すると今度は、放り出されたサイコロが、茉璃香の前まで転がっていた。
「・・・・・」
茉璃香の場合、つられてというより、お付き合いみたいな、感覚なのだろう・・
「えいっ!」
「あっ!」
忠告する間もなく、それを振ってしまった。
『ラッコ。ナガサレナイヨウニ、ネルトキニ、テヲツナギマス。』
「えっ!?キャッ!」
「うわぁ!」
ゴムで引っ張られたかのように、茉璃香と一志の手が引き合うと、しっかりと組み合ってしまった。
「「・・・・・・・・・・」」
別に、不自然なことではない。
ラッコの五指が長ければ、きっと、離れないように、こういう繋ぎ方をするであろう。
「「」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
いわゆる、恋人つなぎというヤツである。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「ギャーーーッ!見てられるかーーーっ!!!」
自称、淑女のお嬢様が、罵声ともに、ドロップキックかましてきた。
「お手々つないで、見詰め合って、顔真っ赤にして、こっちが、恥ずかしいわ!」
まあ・・所詮は、中学生と経験、超、不足のお姉さんだから。
「幼稚園児か!お前らは!見てなさい!本物の、男を悩殺する才媛は!こうなのよ!!!」
・・・・・それは・・このスゴロクの領分とは、ことなるような・・・
『クモ。コーヒーデヨッパライマス』
「う~~~ん・・なんで、急に、くらくらに・・・」
ぽふん。
「大丈夫ですか!?」
酔いによる目眩を起こした環を茉璃香が、なんとか抱きとめた。
「・・眠気覚ましに飲んだ、コーヒーが、今ごろ・・・って!どこで受け止め取るんじゃ!わりゃー!!そりゃー!これ見よがしなチチかーーーっ!!!わざとか!わざとだな!!頭がめり込むなんて、ありえるかーーー!!!こないなチチは、こうしてくれる!!!」
たぷたぷもにゅもにゅたぷたぷもにゅもにゅ
「キャーーーーッ!絡み酒って、前と変わらないーー!」
「うーむ。悩殺という観点では、間違ってないのかな・・・」
「言ってないで、たすけて~~」
・・・なんか、いろいろと、手を出しづらい事態である。
とりあえず・・復活してない二つの亡骸の姿に、安堵することにした。




