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「茉璃香さん!!」

 思わず、突き放してしまった。

「あっ!違うの。いきなりだったから、ビックリしただけですからね」

 ワタワタするのは、こちらの方だと思うが・・そこは夢。これは夢。

 夢ならば、こういうこともあるかと、一志は、自分自身を無理矢理、納得させたのだった。

「え~~~~・・」

 どうやら、しのぶを抱きしめた、その時、情景が切り替わってしまったのか。

 なんだろう?このいきどおりは・・

 たとえるなら、大好物のハンバーガーを半分で取り上げられて、最高級のステーキがやって来たみたいな・・

「一志君なら、いつでも、こういうことしていいからね。それと、あとで、しのぶちゃんにも、同じことをしてあげてね」

「・・・・・・」

 こういう、わけのわからん言い回しをするのは、確かに、一志の記憶の中の茉璃香だけだ。

 驚き焦りで、幾分、上った血も冷めてくるが・・・

 切り替えよう。

これはこれで、おいしいシチュエーションには違いない。

「あの・・・・・もしかして、お見舞いに来てくれたの?」

 一志が、まごまごしていたら、茉璃香の方から、持ってるイメージ通りの質問をされた。

 初めて見た、病室のカプセルで横たわる印象が強すぎたせいか、あるいは、元気すぎる娘が、二人もいるせいか、一志とっては、茉璃香は、未だに病弱だったり入院してたりする姿が、容易に想像できてしまうのだ。

「そう言われると、辺りが、真っ白ですね」

 入れ替わった景色は、茉璃香本人を始めて見た、やっぱり、あの病院のようだ。

「あれ・・?でも、なんで、こんな所で、一志君と、会うんだろう?私、退院したよね。・・もしかして!?一志君が、なにか病気になったの?定期検診の日に、鉢合わせしちゃったとか?」

「だったら、人のこと、心配してる場合じゃないでしょう」

 夢の中だし。

 過去とか現在とか、思考とか、言動とか、入り乱れることは、よくあることである。

 ・・・・・しかしどうしようか・

 夢の中だ、夢の中だと、言い聞かせても、もしかしたら?という懸念が、一志を危ぶませてしまうのだった。

「そう言えば・・二人っきりになることなんて、あんまりなかったような・・」

 なれない緊張に、一志が、そんなことをつぶやいた。

「だって、私は、しのぶちゃんの次って、約束があるから」

「・・・・・」

 それは・・・約束としては、どうなのだろうか?

 しのぶは、承諾してなかったと思うが・・

 当の、一志だって、そんなの、承諾していいものなのかどうか、考えあぐねてしまう。

 てゆうか、そんな約束!持ち出す本人が、一番、疑問に思うべきであろうに。

 

プツンッ・・・


 それは、一志の中で、なにかが切れる音であった。

「よーし!今まで、社交辞令と、聞き流してきたけど、今だけは、真に受けるぞー! 据え膳食わぬは、なんとやらだ!」

 もはや、懸念より欲求の方が、上回ったか?

 茉璃香の一言が、そうさせたのか?

 ようするに、溜まっていたものが、噴き出したのだ。

「あの・・一志君。眼が怖いよ。もしかして・・いつも、私なんかに、つきまとわれて、怒っちゃった?」

「なにを言う!本当なら!こんな綺麗なお姉さん!連れまわして!見せびらかして!思う存分、自慢したいぐらいなのに!」

 それは、まごうかたなき、一志の本心であった。

 それをぶちまけた以上、もはや、一志は自分を止められない。

 その華奢な肢体を・・・

 それでいて、一か所だけふくよかな部分を・・

 しっかり堪能たんのうするように、下から抱え上げるみたいに、抱きしめたのだった。


「てんちゅうーーーーーっ!」


 まさにその時、突如、現れた剣によって、一志の体は、真っ二つにされた。


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