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「どうだ、この恰好は?」
「まあ・・今宵ばっかりは、サンタの恰好をすれば、なんでもありですから・・・」
サンタの扮装をした上司に、精一杯のお世辞の言葉を吐く。
ちなみに、今、金田が着ているのは、大型着ぐるみ用の特注品で、防寒具としては、かなり薄手なのだが、金田は、全く気にした様子はない。
てゆうか、人のことを気にしてる場合じゃない。
「警備担当を仰せつかって、苦節、半年。まさか、電磁警棒で、叩かれる側になる日が来ようとは・・」
「なんか言ったか?」
「いえいえ、な~にも」
思わず、おもいきり、指を差してしまった、後ろめたさが、少しはあった。
「では、園長の役割は、パレードカーの最上段から、お菓子と、雪を模した、エコスポンジをばら撒くことになってます」
「え~~~、直接、ふれあえないの~」
「まあまあ、スネたって、まったく、可愛くないんですから」
どんなに、人なつっこい猛獣でも、振り回した腕や爪が、対象を傷つけてしまう可能性は、十分にある。
「そうか・・・ちょっと待て!今、ものすごく、失礼なこと、言わなかったか!?」
「気のせいでしょ。それより、もう、本日のメインイベントの開催に、移行しなければ」
「・・・そうだな、カップル抽選百組限定。ラブラブお姫様抱っこ救出脱出大作戦だな!」
「・・・・・」
男児としては、口にすることに、大きく、はばかりあるが、とにかく、そういうイベントだ。
「そう。ここのコンピューターで、厳選した、百組の恋人たちに、女性側には、お姫様の恰好を男性側には、騎士か、王子に扮して、様々な、アトラクションを乗り越えて、お姫様を助けに行く・・その、イベントです」
「では、選ばれた、二百人のカップルに、通知と、その準備に、入ってもらわねば」
「ええ・・それが、98組しか、確認がとれなくて・・」
月登が、頭を掻きながら、問題を指摘する。
「なんだ?急な用事とかで、四人、帰っちゃったのか?だったら、取り消して、次の候補者に、通知しないと」
「いえ、いるんですけどね。女性、三人にして、男性が、一人しか確認できないんですよ」
「王子さま役の、トリプルブッキングか・・・・・それって、三股って言わないか!」
「みたいなことがありまして・・・」
「・・・・・」
長々と聞かされたが、そう言わずにはおれない、気苦労みたいなものを感じた。
「ええ~~っと、なんです?つまり、来場者参加のイベントに、我々が、抽選で当たったということですか?」
「来場時に、イベント参加の意思の有無、記入する項目が、あったはずなんですが・・・」
「ああ!あれか・・・・・お前らは~~~」
勝手に名前を使われた一志が、怒りに染まれない顔で、三人をにらみつけた。
「だってだって!恋人どうしなら、名前書かなきゃって、書いてあったもん!」
「でも、まさか、三人とも、当選するなんて・・」
「かんちがいするな!おまえをこまらせるたなんだぞ!こんなの、いやがらせ。ただの、いやがらせなんだからな!」
運営側にしたら、メチャクチャな主張だ。
こちらの、身勝手で、迷惑をかけるわけには、いかない。
「残念ですが、他の人に、当選の権利を譲るということで・・・」
「水臭いぞ!一志!」
「そのとおり!こういう時こそ、親友でしょ!」
「うおおっ!」
「功一くん。清隆くん」
どこから、降ったか、わいたか、しのぶのストーカー。
神出鬼没・・というより、もはや、妖怪変化な二人組が、飛び出してきた。
「聞けば、男の人数が、ちょうど、足りないとか!」
「だったら、ここは、名乗り出るのが、親友としての務め!」
「ふざけんな!お前ら、女の子と、いちゃっつく理由があれば、なんでもいいんだろ!」
「でも、これで、一応、問題は、解決ですね」
「解決するかーーーっ!こんな奴ら、妨害役のモンスターにでも、回しときゃいいんすよ!地で、やれるし!手間もはぶけるし!」
「そんなもん!うちにだってものすごいのが・・いえ、そうなると、システムの全書き換えが、必要になるし・・・おかしいな、この日のために導入した、ハイスペックコンピューターが、なんで、こんな、初歩的ミスを・・」
「フッ・・フフ・・、まさか、また、孤島に住む、異才の老人作だったり、しませんよね・・」
月登は、答えなかった・・・
ただ、目が、見開いただけで・・・




