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場所は変わって、ここは、近くにあった喫茶店。
外で、あんな騒ぎがあったものだから、環としのぶの貸し切りみたいになっている。
お店側も、迷惑なことだ・・・
「とりあえず、なにか頼んで。それと家は、普通に、大手の鉄鋼メーカーだから」
そこをわかってもらわねば、なにも始まらなそうだ。
「それで・・柚月しのぶちゃんだっけ?うちの茉璃香が、ライバルとか、意中の人の妹とか、どっちかわからないこと言ってたけど。」
ちゃんと聞けたら、よかったのだけど。
茉璃香は、よそ様の、家庭のことをペラペラしゃべったりは、しないだろう。
「なに?兄妹で、恋人ごっこでもしてるとか?そういうこと」
「ゴッコじゃ、ありません!わたしと、お兄ちゃんは、ほんとに、恋人なんです!わたし、もらわれっ子なんですから!」
「そうなの・・」
「そうです!だから、お兄ちゃんが十八歳になったら、お役所に届け出だして、兄妹やめて、そしたら、お兄ちゃんと、ずっといっしょにいられるんです!」
思わず環は、頬を引きつらせてしまったが、複雑な家庭事情とかありそうなら、笑ったりできなさそうだ。
「・・・・・・・そりゃ~~、いろいろ、手間がはぶけて、いいわねえ・・」
「でしょでしょ!」
力いっぱい、しのぶは肯定するが・・・なんだろう?
痛ましさが、逆に笑えるみたいな、この気持ちは。
こうして見ると、すごく可愛い女の子なのに・・・
そうか!子供が、無理して、背伸びしてる姿に重なるんだ。
応援したくなるような・・小バカにしたくなるような。
「名前も、住所も、変わらないし。必要なのは、婚姻届けだけ。わ~~~、ほんとに、そのまんまだ」
「そうですそうです!」
半ば、からかわれてるということに、気づいてないみたい。
一途というより、猪突猛進。
ここまで、ギッチリ思い詰められてたら、逆に、もっと気軽な子で、気晴らししたくなるような・・
なんだか、茉璃香が、言い寄るぐらいで、ちょうどいいみたいな、気がしてきた。
「勝手なこと言うなーーーっ!」
環が、想いを馳せていたら、そこで、何者かが、けたたましく喫茶店に乗り込んできた。
「あ?!お兄ちゃん」
乗り込んできたのは、当人の、一志であった。
「なんでここに?」
「そりゃ、駆け付けるだろう。お前が、黒ずくめの男に、さらわれたっていうなら!」
「いい加減、その観点から、離れなさいよ・・」
ひどい誤解なのに、厳しく言えない。
「で!来てみれば、何だ!?今の、人生設計。短絡的にも、ほどがあるぞ!」
「え・・・・・・・イヤ・・なの?」
泣きそうな顔をされては、一志も、たじろいでしまう・・
「いやっていうか・・・はずかしいだろ。まだ、養われてる身だってーのに。そういうことは、自分と、あと一人ぐらい、養えるぐらいに、経済力ってのを身に着けてだな・・」
「だいじょうぶ!わたしが、特許の、十か、二十とって、お兄ちゃんには、ずっと、楽させてあげるから❤」
「・・・・・・・・・」
妄想か?
いや、こいつに流れてる、血があれば、あるいは・・・・・などと、喜色満面のしのぶに、そういう未来の可能性を一志は、模索してしまうのだった。
「ああ、ちょっと、それいいかもって顔してる~」
「アンタ!関係ないでしょ!また、何しに来たんです!二度も大負けして、懲りたんじゃないんですか?!よそん家のことに、ちょっかい出してる場合じゃないでしょ!」
「・・・・・・」
環の笑顔が、かなり引きつる。
「ちょっと、待ったーーーっ!」
そこで、さっきの一志と、同じようなテンションで、また誰かが、喫茶店に飛び込んできた。
「助けが必要って、聞いて来たら、なんだ!?今の話!」
「環さん!あなただったんですね。余計なこと、しないでください!私、今のままで、十分、幸せなんですから」
入ってきたのはアイリで、そのあと、息を切らせながら、茉璃香がやって来た。
開口一番に怒鳴られたが。
「余計なこと!?・・って言われたら、その通りだけど、面と向かって言われると、カチンときたぞ。もういいわ!みんな、アホになってしまえーーー!」
仲間はずれにされた魔女さながらに、環は、悪魔のタクトをふりかざす。
その指揮は、誰もが従い、狂想曲を奏でたのだった。
「なんで!なんで!せっかく、お兄ちゃんと恋人同士になれたのに、わたしより、おっぱい大きい娘や、綺麗な娘が、次々やって来るの!?わたし、お兄ちゃんさえいてくれたら、ほかに、なにもいらないのに!」
「自分でも、わからないんだよ!殴りたいのか、飛び込みたいのか!あたしには、こんなことできる男なんて、ほかに一人もいないんだよ!」
「他の男性なんて、考えられないのよ!今さら言い寄って来る人なんて、みんな、お調子者にしか、見えなくて。思いが届かないのなら、せめて、初めては、この人がいいとか、思い出がほしいとか、本当に、それだけなのよ!」
「みんなして、これからの人生こそ、楽しまなきゃ、いかんでしょ!すぐに、決定づけなくても。そんな・・責任が伴うことは、もうちょっと、先にしたいんですよ」
「なに!?その、事なかれ主義。皆、今こそ大事だって、こんなに、心を重くしているのに!」
「ほほ~う」
とりあえず、思惑通り、胸を開いて、言い争いになってる、その姿を目の当たりにして、
一通り、本心を耳にした環が、据えた声で、立ち上がった。
「なるほど。胸が重くて、肩がこるか・・」
「そうそう」
「そりゃ!この!無駄にでっかいチチのせいじゃーーーーーー!」
「うにゃ~~~~~~~~~~~~!」
環が、茉璃香の胸を後ろから鷲づかみにした、悲鳴であった。
「なんじゃ!この、タプタプは!バランスも考えんと、ポンポンさせおって!これのせいか!これのせいか!運動できないって!この、重たい二つのポンポンのせいかっ!いらんチチなら、私によこせーーーーー!」
「イにゃ~~~~~~~~!」
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『腹を割って話し合うメカ』・・・
どうやら、ホンネをぶっちゃけさせる、怪電波は、全方位に向けて、配信されてるようだった。




