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リニアモーターカーの快適さを味わいながら、四人が目指すのは、孤島の研究所だった。
「・・・言っとくが、なにもない所だからな。当てが外れても、文句いうなよ」
「いいのいいの、俺たちは、しのぶちゃんさえいてくれれば」
「そうそう、それだけが目的なんだから」
いくら当人が、前日からのしたくに疲れて寝ているとはいえ、どうやったら、そんなセリフを恥ずかしげもなく言えるんだか・・
「・・・気合い入ってるとこ悪いがなぁ、まだ泳ぐには、少し早いだろ!」
つまり、しのぶの水着姿は、完全に二人の妄想である。
「だいじょうぶ。俺ら、ウェットスーツでもいけるから」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
もう、聞かせられない。
隣の席で寝息をたてている妹の横顔を見ながら、一志は今、激しく後悔していた。
一つは、誘ってもいないのに、やって来たこの二人。
頭のどこかで、変に二人きりになるよりはいいか・・とも考えたが、人選は完全にミスだ。
休日の朝、人もまばらな駅前に、しのぶと二人でやってくると、予告通りにそこにいた。
もう、何故だ?!と問いただす気にもなれない。
この二人を本気で撒くつもりなら、国外逃亡ぐらいの覚悟が必要なようだ。
それと、もう一つ。
それは、これから向かう島だ。
とりあえずは、田舎の遠い親戚だと説明してあるが、それ以上の詮索をどうはぐらかすか・・・一志自身はもちろん、しのぶのためにも。
海という条件を満たした、どこか別の行き先を探す手もあったが、思いついての突然の旅行ともなれば、時期が時期なだけに、どこも折り合いがつかなかった。
それでもやっぱり、あの島を選ぶべきではなかったのではないかと、後悔は尽きない。
リニアモーターカーが減速し始めた頃、一志の不満は、子供達だけの旅行を止めもせず、にこやかに送り出してくれた、母親にも向かいだした。
放任主義にも、ほどがある!と。
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いや・・そりゃ確かに、一度、完全に放任された身ではあるのだけど。