表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/111

57

・・・・・・・・辺りは、凄惨なものだった。

 しのぶと、アイリも、協力してくれて、なんとか、カメラを撃退できたが、硝煙が立ち込め、ガラクタが散乱して、とても、一介の住宅街とはおもえない。

「オーーーーーッ、ホッホッホッホッホッホッ!これで勝ったと思わないでね」

「・・・いたの」

 これだけの惨状の引き金になっておいて、環が高笑いしている。

・・・さすがに、ハラ立ってきた。

「勝もなにも、お騒がせしてるだけでしょ、アンタ」

「今回のミスコンは、前回とは、ひと味、違うわよ。なにしろ、わたくしが、水着審査をねじ込んでやったのですからね!まともにスポーツもできない、ガリガリか、ブヨブヨの肢体に、男どもを幻滅させるといいわ!オーーーーーーーーーッ、ホッホッホッホッホッホッホッホッホッ!」

 いうだけ言って、環は、走り去っていった。

「・・・・・・・・・・・」

 こちらも、言いたいことは、山ほどあったが、そんな気持ちも、涼風に洗われたように、消え去ってしまった。

「「「「あ~~~ああ」」」」

 茉璃香以外の誰もが、その背中をまるで、大鷲に挑むヒヨコを見るような・・そんな、憐れんだ眼差しを送るのだった。

                  ・

                  ・

                  ・

                  ・

                  ・

「秋の孔陽祭!ミスキャンパス!グランプリは!里政茉璃香さんで~~~す!」

 ステージに、水着で立つ茉璃香に、盛大な拍手が、送られた。

「ハイ!ありがとうございます!」

 茉璃香は、緊張で、上ずった声で、なんとか対応している。

「いや~~~、春に続いて、二連覇、おめでとうございます、茉璃香さん。それも当然といいましょうか・・ステキなプロポーションですねぇ」

 一緒に、ステージにいる司会者が、歯に衣着きぬきせぬ、感想を送る。

「やだッ!違うんですよ。やっと、運動を始められるようになったのが、つい最近で、それまで、低周波治療ばっかりで、なんとか、お肉が残ってるだけで・・」

 言い訳がましく、ワタワタと、取り繕うとしているが、本当に、恥ずかしいのだろう。

 それがまた、愛らしくて、会場の野郎共が、テンションをマックスにして、赤い顔した茉璃香に、声援を送る。

「なんだか、耳にした女性が、みんな、運動をやめてしまいそうですが・・続けて、園寺環さん。準グランプリ、おめでとうございます」

「い・・え、いえ。過大な賞をいただきまして」

 マイクを向けられた、同じく水着の環が、作り笑いをしている。

 こちらは、緊張のためではあるまい。

 準優勝らしく、控えめに、その場に、たたずんでいるが、一志の目には、いっしょに並びたくないように見えた。

 さもあろう。

 聞いての通り、茉璃香のプロポーションは、規格外だ。

 となりに立てば、誰だって、こけしになってしまう。

「あっ!」

 そこで、茉璃香が、誰も気づかないぐらいの、小さな、驚きの声を上げた。

 正面、奥にいた、環の自業自得を笑いに来た、一志達と、目が合ったのだ。

「・・・・・・」

 柔らかな笑顔と共に、小さく手を振ってくれた。

「オオオオーーーーーーーーーー!!!!」

 その魅力に、もはや雄叫びと化して、男共の声が、会場を震わせる。

 その笑顔が、自分にだけに、向けられたものだとわかった一志は、恋の矢でも、撃ち抜かれたかのように、心臓が、跳ね上がった。

 もう、これからは、茉璃香のことをただの、知り合いのお姉さんとは、認められなさそうである。

 それは、試練がともなうことなのだが、今はただ、この幸福だけに、包まれていたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ