ミスコン、再び
「・・・歩きにくいんだけど」
柚月一志は、妹のしのぶに、まるで、コアラみたいに、腕にしがみつかれていた。
「なに言ってるの!こんな、可愛い娘に、抱き着かれて。拒む理由が、どこにあるっていうの?」
「これから、学校、行くんですけど・・」
代わりに、答えてくれた母親・・沙江子の熱弁に、一志は、正論を返す。
そう。
これから、登校だというのに、腕を絡めるというより、完全に、しがみつかれている。
何故か?
理由は、わかってる。
「じゃあ、わたしは、逆の、腕をとる!」
どこからと現れた小さな影が、反対側の腕を絡めて、なんだか、投げ技の真似事みたいことをしてきた。
「いや~~~~~~!やっぱりでたーーーっ!」
理由、その一。
一志を斃すと豪語する、金髪碧眼の少女、アイリである。
こんな、小さな女の子が、毎回毎回、男にからんでくるなど、別の意図があるとしか、思えないが・・・
「それじゃあ、私もー❤」
「ギャーーーッ!もっと、でたーーーーっ!」
一志の両肩に、両手をそえて、抱き着いてきたのが、理由、その二。
豊かな、髪と胸が特徴な美人、茉璃香である。
・・・ただ、小中学生のノリにつき合って、こういうことをするのは、止めてほしい。
「うお~~~~~~~~~~~~~っ!」
理性が、保てなくなるから・・
「ああ~~~!だらしない顔してる~~~!」
「電撃は、よせっ!この体勢なら、全滅だぞ!」
スタンガン持ったしのぶを押しとどめる。
暑さも、和らいできた、今日この頃。
暦のうちでは、秋でも、ここだけは、春だか、真夏だか、わからないぐらい、熱いようだった。
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「オーーーーーッ、ホッホッホッ!見たわよ!あなたの正体!」
・・・・・春ではないと、念を押したはずだが、なんだか、それぐらい、ヘンな女の笑い声が、聞こえた。




