アイリスアウト
「いやーーーーーーっ!またやって来たーーー!」
「当然だ、柚月一志は、わたしが殺るんだからな!」
「うそつき!ホントは、お兄ちゃんに、かまってほしいだけのクセに」
「なっ!ちがうっ!わたしは、純粋に、確実に、誠実に。柚月一志の命を取りに来ただけだー!」
「知ってる言葉、並べただけで、ごまかさないの。みんな、一志君、大好きっていうなら、みんなで、仲よくしたらいいじゃない」
「「できるかー!!」」
耳を傾けると、まるで、ワケのわからない会話だが・・
見てみると、何かの作業用のロボットに跨った、金髪の女の子をバズーカを手にした、ナチュラルなボブの少女が迎え撃って、それをウエーブロングの女性が仲裁しているという、さらに、ワケのわからない状況だった。
ならば、そ知らぬフリを決め込めばいいのかというと・・
なぜだろう?
三人の妙齢の女性は、それができないほど、それぞれ違う魅力にあふれていた。
「とにかく!柚月一志は、わたしのものだからな!ほかの誰にも渡さん!」
お尻までとどいた、金髪の美しい、小さな女の子は、乙星アイリといった。
「イヤ~~~ッ!とうとう、本心いったーーー!」
オロオロする様が、まるで小動物のように愛らしい少女は、柚月しのぶである。
「まあまあ、しのぶちゃんの方がお姉さんなんだから、少しぐらい、譲ってあげても・・」
男の取り合いに、そんなことが言えるのは、寛大なのか、緩慢なのか・・
彼女は、里政茉璃香である。
これが、本当に、異性の奪い合いであるならば、非常に、羨むべき光景であるはずだが・・・・・
「お前ら、いい加減にしろーっ!」
バタンッ!と、玄関を開けて、そこから、引き締まった眉をした、少年が恫喝したのだった。
「お願いですから!やめてください!恥ずかしいから!」
真っ赤にして、泣きだしそうな、グシャグシャな顔では、威厳も、なにも、あったものではないが。
・・・・・当人にしては、そんな余裕は、なさそうである。
「なんです!三人して!朝っぱらから、近所迷惑な」
そういう範疇であろうか?
彼こそが、渦中の人、柚月一志であった。
この物語は、この一志と、それを取り巻く、美女、美少女たちとの、羨望を禁じえない境遇にいながらも、それに、ひたれない・・・
気苦労、多々ある、少年のストーリーである。
・・・・・ではあるのだが、それでも、やっぱり、羨望を禁じえないであろう。
「ハイハイ、それじゃあ、ノーサイドってことで、中に入って、冷たいものでもど~お?」
今度は、一志の後ろから、サイドに三つ編みをした、大人の女性が、家の中へと、招いてくれた。
彼女は、柚月沙江子。
そうは、見えないだろうが、一志の、実の母親であった。
「わ~~~、もう、より取り見取りの、ハーレム状態じゃない」
「・・・・・・・・・」
ほんっとうに、そうは、見えないだろうけど・・




