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「ロボット工学の目覚しい進歩により、様々な分野にロボットが産出されて、その開発者、技術者が重宝され、逆に肉体労働者や職人と呼ばれる人々がどんどん数を減らしている時代ではありますが、皆さんはそんなことは気にせず、様々な知識を身につけ、人生の選択を広げて・・・」

 老教師のうんちくは、実に退屈で眠気を誘う。

 窓際の席から空を見上げると、実に快晴で、

 こんないい天気には、沙江子と一緒に迎えに来た、あの海岸を一志は思い出してしまう。

 ついでにあの老人のことも・・・

 国岸創時郎くにぎしそうじろう・・孤島に住む、謎の科学者。

 なんでも、表に名を残せないまでも、裏の世界では名の通った科学者だったとか。

・・・それがどういう意味なのか、一志としては、その正体を知りたいとは思わない。

 異才・・・ではあったのだ。

 ただ、異なる才能というのが、必ずしも、褒め言葉に当てはまらない人物で、

 作り上げた作品のことごとくは、性能と実用性が釣り合わないものばっかり。

 わかりやすく言えば、地面に落ちてるコインを拾うのに、地球ごとひっくり返すみたいな。

 人格も、それに相応しく盲進的で、一志は初対面の時、いきなり荷物みたいに抱え上げられたものだった。

(そうそう、こんな小さなロボットも、あの老人の作品には、いくつかあったな・・・!?)

 一志は、青空から黒板を避けて教室に視線を戻したら、教室の床で這いつくばってる、昆虫型の小さなロボットを見つけた。

 高性能のモーターは、黒くて平べったい虫より静かに前進していく。

 どこから来たのか?と進行方向を逆にたどれば、三つ後ろの席で、丸い体をさらに丸くして、なにやら、パネルを操作している清隆を見つけた。

 ロボットの方は、椅子を掻い潜って、生徒の足をさけて、たどり着いた先は、斜め前方の、しのぶの席だった。

 正面の、机の影になる位置で、しのぶは気づいていない。

 最近の短いスカートの足元で、なにを待機しているのかと思えば、そこからニュウと飛び出してきたスコープと、いやらしく歪む清隆の顔がシンクロした。

「くらぁ!なんばしょっとかーーーーー!!」

 一志は、席から飛び上がり、清隆のその顔に飛び蹴りをかました。

 ボールみたいに清隆を吹っ飛ばし、振り落とした足で、そのままパネルを踏み割った。

「ああ、我が青春の一ページが」

「じゃかやしい!なにが青春の一ページだ!この変質者」

 鼻血を流しながら、壊れたパネルを見て、むせび泣いている清隆の両襟を首絞めかねん勢いで引き寄せる。

「まさか、こんなものまで、売りさばいたりしてねぇだろうな!」

 清隆は、視線をそらす。

「安心して、僕、個人の趣味だ」

「余計、安心できんわっ!」

 授業中に、教室の真ん中で取っ組み合いを始めると、もう老教師では止められず、他のクラスから、体育教師が駆けつけて来る惨事となった。

 丸太のような腕で両脇に頭をはさまれて、生徒指導室まで引きずられていくざまに、一志はなんだか既視感きしかんを覚えた・・


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