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「ちょいと、体育館裏まで、ツラ貸せや!」

 それは、昼休みの、チャイムが鳴った直後であった。

 一志は、功一に肩を捕まれ、呼び止められた。

 もはや、有無など言わせないといったふうだが、スルーしたい。

 だが、こいつらは、無視したらしたで、何をしでかすかわからない不気味さがあるのだ。

「で、何の用だ」

 体育館裏に来てみれば、待ち構えていた功一と清隆に、どうでもいいみたいな口調で、とりあえず訪ねてみた。

「言わずともわかろう。あのお姉さんは、一体、お前のなんなんだ!?]

 一志は、あらかじめ用意していた答えを言った。

「ただの、ちょっとした知り合いだよ。それがどうかしたのか」

「ほ~う、今年の、孔陽大ミスキャンパスが、ただの知り合いか・・」

「・・・・・」

 そうだったのかと、改めて茉璃香のことを驚き思う。

 その容姿を思い出せば、そういうこともあるかと、すぐに納得たが。

 それにしても、この二人、美女だ美少女だというだけで、もはやただの知り合いとは、認めないのか・・・それほど、それもやむなしな、あの二人が稀有な美貌の持ち主なのか、それとも、よほどこの二人に、現実の女に縁がないのか・・

「・・いらん誤解しやがって。勝手な妄想で、勝手に腹立てんな。妹以上になれない女の子と、年下だってナメてる女性と、どちらも、俺から方からなにかする気はないぞ」

 それは本心であった。

 だが、二人の若くて可愛い女性陣に、付きまとわれてるという事実は動かない。

「そうやって、言い寄られる側のポーズをとって、適当にあしらってるだけだって言い訳作れば、合法的に、二股かけられるなあ!」

 怒りに任せて、二人が、掴みかかってきた。

「なんで、そうなるんだ」

「血の繋がりのない妹の次は、三角関係なんて、どこまでベタをやる気だ。ふざけるなっ!」

「知るかよ。俺のせいじゃない。ていうか、誰に言ってんだ」

「よーし、わかった。あのお姉さんは、お前の好きにしろ!」

「だから聞けって、人の話」

「でも、しのぶちゃんになにかしたら、許さないぞ」

 こちらの都合など、まるで意に介してないが、これでも、二人にとっては、精一杯の譲歩なのだろう。

 眼鏡越しに映る、憎悪で血走った、その二対の眼球からは、そのまま血涙が溢れてきそうだ。

 もうめんどくさいので、とっとと終わらせることにする。

「わかったよ。現状維持でいいんだな。今のまんまで。だから、お前達も、俺達を刺激するようなことはやめろ」

「お話、終わった?」

 一志がうんざりと、二人を振り払ったとき、一志の後ろから、可愛い声がした。

 ここでなにがあったのか、まるで知らないみたいに、あどけなくキョトンとしている顔を出せば、二人の顔がデレっと変わる。

「はぁい。もう終わりましたよ。男の友情を確かめ合ったところです」

「僕たちは、仲良し三人組ですよー」

 気色の悪い。

 こんなんで、バレないのも不思議だが、しのぶはそれなりに、この二人は良き友人だと認識しているようだ。

「じゃあ、いこいこ。この向こうに、二人っきりで隠れられる、木陰を見つけたの」

「・・・・・・・・・・」

 きっと、一志以外の男が、まともに写ってないからだろう。

 まるで雰囲気など察さず、一志の腕に自らの両腕を絡めて、引っ張っていく。

 そう言われた以上、ついてくこともできない二人は、恨みがましく、嫉妬の情念で貫きそうな視線をぶつける。

『約束、忘れんなよ!』そんな怨嗟の声が聞こえたような気がした。


 それから、しのぶについて行った先は、校内のほとりの緑の茂る木の上だった。

 しのぶにしてみれば、実用性など二の次で、一志と二人っきりで隠れられる場所として、探り当てたのだろうけど・・

 自然育ちで、こういうことが得意な一志はいいとして、スカート姿で、ヨチヨチとはしたなく登るしのぶを見れば、やはり遠慮したい。

 予鈴の鳴るギリギリまで、のんびりすごして、午後の授業に二人で駆け込んで、授業が終われば、一緒に帰ろうとすり寄ってくる・・・

 なんだか、さっそく、こちらを見て、ヒソヒソやってる女子達を見かけた。

 現状・・どうにかしなければと、一志は、真剣に考えざるを得なかった。


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