表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/111

107

 水蒸気による視界の悪さにも負けずに、少年は、走り出していた。

「中枢コンピューターは、こっちか」

 時折、出てくるモンスターは、丁寧にも、擬音つきなので、先手必勝で、なんとかなった。

 利口でないことは、わかっていた。

 運営側だって、出しゃばられても、逆に迷惑だろう。

 だが、一志には、この件は、自分が一番、解決できると、確証があった。

 それは、コンピューターへの、直接物理攻撃である。

 それが、10年という、少年にとって、長い時間で培われた答えであった。

・・・・・たしかに、こんなことを即断できるのは、一志ぐらいだろう。

「まったく、死んでからも、どれだけ人様に、迷惑かけるんだ」

 それは、使命感と言っていいのだろうか?

 あの老人の作品に、一撃、撃ち込みたい気持ちも、半分くらいあるが。

 とにかく、今、一志は、あの二人からがめてきた、耐熱スーツとランチャーと、あと一式を手に、コンピュータールームへとたどり着く事ができた。

「ここじゃないのか?」

 システムを見回して、いくつか弄ってみて、ここにはないことを確認した。

 では、どこか?

 あまり、時間はない。

 今すぐにでも、機能を停止させなければならないというのに・・

「お兄ちゃん」

「うわぁ!」

 切羽詰まってるときに、いきなり声をかけられて、驚いた声を上げた。

「しのぶ?!」

 なぜここに?という疑問より先に、一志の胸に飛び込んできた。

「ま~た、一人で、どこかに行くきなんだ」

「アイリ・・」

「止めないけど・・でも、心配だけはさせて」

「茉璃香さん」

 どうしてか?三人とも、ここにいた。

 混乱の中、抜け出すだけなら、一志がやったように、難しくないだろうが。

「だってだって!お兄ちゃんが、出て行くのが見えてから」

「出てくる、モンスターは、わたしがたおして」

「カートをちょっと拝借したの。これ、いざという時、スタッフと同じ権限が、与えられるんですって」

 しのぶなら、一志の後を付けるぐらいのセンサーぐらいは、あるだろう。

 アイリの能力でモンスターは蹴散らして、茉璃香が取り出したのは、父親のつてで、手に入れた、カードキーか。

「手段は、わかったけど、目的の方で・・」

「お兄ちゃんが、心配だからに、決まってるじゃない!!」

 ギュッとしがみついたまま、涙混じりに訴えてきた。

「しんぱいなんて、してないんだぞ!でも、お前は!ぜったい、危ないことするんだろ!しんぱいなんて、してないんだからね!」

「わかってるの。一志君、これから、なすべき事をするんでしょ。その負担を少しでも減らせらなら、私達を使ってほしいの」

 三人とも、一志の無鉄砲ともいえる行動に、救われたことを思い出していた。

 そして今、たくさんの人が不安や恐怖に苛まれてるなか、それを振り払おうと、また一人で、危険な地へと赴こうとしていることを

 その高潔な精神に、惹かれる思いと、止めたい気持ちとのジレンマを抱えたまま、一志を追いかけてきてしまったというわけだ・・・・・

 ただ、それは、誤解といっていいぐらい、美化されたものであったが。

「ちょっと、爺さんの作品をしばきに行くだけだって!」

「嘘!!!そんなこといって、また、だれかのために、無茶しちゃうんだ!」

「うん、わかってる。おまえは、そういうやつだ・・うれしくないのに」

「自分達だけ、安全なところに隠れて待ってて、一志君が、ケガをして戻ってくるなんて、もう、堪えられないの!お願い!途中で、置いてってもいいから、連れてって」

「・・・・・」

 愛か重い。

 不届きにも、一志は、この可愛い娘ばっかりに、なんでこれほど想われてるのか、本気でわからなかった。

 う~~~~む、男の子と女の子との、危機感の違いだろか。

 擦り傷、打ち身、火傷に、感電・・・そこまでは、普通の男の子にもないだろうが、とにかく、そんなことがしょっちゅうな島育ちの一志と、血を見ることも珍しい、女の子との間では、怪我の認識に、大きく隔たりがあるようだ。

「ケガぐらい、当たり前だって!男だったら、ちょっと行って、すぐ戻ってくるから、待っててくれ」

「イヤ!!絶対!イヤァ!!!」

「つれてかないっていっても、絶対!ついて行くんだからな!」

「それじゃあ、私達が、勝手について行くの!そして勝手に、一志君のお手伝いをして、一緒に返ってくるの。それなら、文句ないでしょう!」

 大ありだが、もう、連れて行くしかないのか。

 もう、もたもたしている余裕もないし、かといって、引き返しても、安全とは限らないし・・・

 もうやけだ。

 危険だとわかって着いてきたこいつらが悪いと、納得しよう・・・


 い~や。

 理屈抜きに、こんな娘たちに、こんなに心配させる、一志が悪い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ