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「なんだ!?なんだ!?突発のイベントか?」

「う~~~ん、それにしては、悪者が、貧相のような・・」

 テーマパーク中のモニターが、乗っ取られて、次々と得体の知れない眼鏡が映し出されてるという異常事態なのに、、他の来園者には、緊迫感がまるでなかった。

「それもそうか・・」

 奴らの、殺意の対象である一志も、事が重大だとは、思ってなかった。

 なにしろ、やることなすこと、失敗ばかりしてきた奴らが、やることだから。

『ユウェンタースランドは、もう、我が手中にある。無駄な抵抗は止めて、投降しろ。そうすれば、命は助けてやらんけど、我が宿敵として、墓に花を供えるぐらいはやってやる、』

『どちらが、賢明な判断か、無い知恵を絞り、考えてみることだな。結果は、変わらないけど!』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 モニターを見ていた、全ての来場者が、困惑している・・・というより、ただ、困ってるだけみたいだった。

「なんなんだ・・こいつらは・・・子供が、オペレーションシステムに潜り込んで、悪の幹部ごっこでもやっているのか?」

「それにしては、真に迫っているというか、私怨がこもっているっていうか・・」

 さすがに、スタッフぐらいは、異変だと判断したようだ。

『全スタッフに、緊急命令!動ける者は、直ちに、オペレーションルームに向かえ!!一刻も早く!この馬鹿騒ぎを止めるんだ!!』

 インカム越しでも、周りに響き渡りそうな怒号が、発せられた。

 そうは見えないが、園長は、これでも有能な総責任者だ。

 判断は、早い。

『そうは、させん!』


ブシャーーーーーーーーーッ!!!


 モニターの向こうで、功一がなにかやったのか、そこら中で、スモークが上がり始めた。

「なんだ!?煙幕のつもりか?このぐらい、目をこらせば・・」

「キャーーーーーッ!」

「なんだ!どうした!?」

 突然の女性スタッフの悲鳴に、慌てて、男性スタッフが確認する。

「あれ!あれっ!!」

 尻餅をついたまま、指さした先は、大きな影。

 靄をかき分けるように、その姿を現したのは、二メートルは優にある、筋骨隆々の棍棒を持った化け物だった。

「こいつは、トロールか!落ち着け!立体映像だ!」

 そうは言うが、映像の精巧さは、検証済みだ。

 気の弱い人なら、これだけで、気を失ってもおかしくない!

「あいつら。どこまで、我を忘れてやがるんだ!」

 辺りで、悲鳴や泣き声が飛び交う。

 スモークは、太陽の光を遮るためか。

 どこからともなく現れる無数のモンスターに、もう、パニック状態だった。

『ふははは!かつての、ソドムとゴモラの再現だ!』

「全然違うだろ」

 無意味とわかっていて、モニター越しにつっこんだ。

 逸話だと、堕落の街、ソドムゴモラを火の雨を降らせたのは、美しい天使である。

「落ち着いてください!落ち着いてください!霧に投影された映像です!こちらに、害はありません!」

 園長、自ら、事態の爽秋に乗り出した・・・・・だが、

「ギャーーーーーッ!!!本物!」

 園長が、倒れそうになってる女性を支えてやると、その女性は、気絶してしまった。

 よく見たら、最初に悲鳴を上げた、女性スタッフだ。

「・・・・・何故だ?」

「まあ、知らぬが幸せってことで、園長は、システムの復旧をお願いします。サブルームにこもって」

「後文の方が、メインに聞こえるのは、気のせいか?君とは、一度、徹底的に、話し合う必要がありそうだな」

 今は、あとにして欲しい。

 確かに月人の言うとおり、ここまで、システムに介入されたのなら、一刻も早く、それを取り戻さねばなるまい。

「功一清孝!どうせ、近くで見てるんだろ!隠れてないで、出てきたらどうだ!!」

 霧に向かって、叫んでみる。

 確証はあった。

 ホログラフでは、自分を仕留めることはできないことと、奴らなら、直接、手を下したい、であろうこととだ。

「ふふふふふ、よく気づいた」

「ここは、真打ち登場といこうか」

 出てくるかどうかは、半信半疑だったが。

「・・・・・全然、様になってないぞ」

 二人の現れたのは、高いオブジェの上だった。

 足下でも爆破できたら、一気に解決するのに。

 その姿は、着ている物は、さっきより防御力の高い物に変えてあるみたいだが、ひび割れた眼鏡と、鼻に詰められたティッシュがそのままでは、戦術的にもビジュアル的にも、絶対、出てくるべきではないと思った。

「降りてこい!今度という今度は、決着を付けてやる!!」

 説得の手段は、排除した。

 というか、もう、知り合いと思われるより先に、始末することにした。

「決着だと~。勘違いするな、これから行うのは、一方的な誅伐ちゅうばつだ」

「それをやることを正義という!」

 清孝が、パネルを操作すると、上空にたちこもった蒸気が、どんよりと濃さを増して、やがて赤く・・萌えるような赤へと変わっていった。

「なんだ?さっき言ってたが、本当に、火の雨でも降らせるつもりか?」

「演出だ。ふさわしいだろ」

「もちろん、それだけじゃない」


ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!・・


 重い足音を響かせて現れて、一志を取り囲んだのは、古今東西の、ありとあらゆるモンスターだった。

 オーク、ゴブリン、ハーピー、リザードマン、ミノタウロス、鬼人、大蜘蛛、なまはげなんてものもいた。

 その全てが、凶悪そうな眼差しと、得物を持っている。

「お前が魔物に襲撃される。その光景を眺めながら、ここから攻撃する。どうだ!効果的だろう」

「君は、もう、完全に、包囲されている!」

 モンスターの映像の、溢れた部分から、ガードロボットが、チラ見できた。

 どうやら、そのようだ。

「虚像の後ろに、本物の壁をか。それぐらいは、考えたか・・」

 園内に配置されていた、ガードロボットであれば、飛び越えられない高さではないが、この分だと、上空にも、なにか配置されてそうだ。

 つまり、絶体絶命。

「だからどうした!!こんな奴らに!命乞いなどできるか!!!」

 拳と意志を固めて、モンスター達を睨みつける。

 そして、真なる敵に、言い放つ。

「こんなもんで、俺をどうこうできると思ってるなら、やってみろ!お前らとは違って、俺には絶対!守らなきゃならないもの達があるんだからな!」

「「そーゆうこというから!許せないだよ!」」

 それが合図となって、功一と清孝が、改造銃を放とうとした。

 だが・・・

「お兄ちゃーーーん!」

 その時、霧の中から、しのぶが飛び出してきたのだ。

 これでは、撃てない。

「しのぶ!?どうして、ここに?」

「よーし。なんとか、権限の一部を取り戻したぞ。まずは、お客様が密接してる、このエリアからだ」

 園長だ。

 使いどころさえ間違ってなければ、頼りになるのだ。

 僅かな時間に、二人が書き換えたシステムの数%ほどだが、復旧に成功したようだ。

「一志君!」

「かずし!」

 続けて、茉璃香とアイリも、緩んだ包囲網の隙間から、現れた。

「残ってろって、言ったろ。ここは、危険なんだ、今すぐ、逃げるんだ!」

「イヤッ!おいてかないで。つれてって。お兄ちゃんがいてくれなきゃ、わたし、どこだっていやぁ!、」

 抱きついて、離れようとしない。

「食べるなら、私にして!一志君だけは、食べないで!私の大切な人を奪わないで!」

「かかってこい!柚月かずしは、わたしのものだ!!・・・・・ちがうっ!そんな意味でいったんじゃない!とにかく、ちがうんだからね!!」

 これからバトルという時に、女の子にからまれて、動けなくなってしまった。

 それも、飛び切りの女の子たちに、告白されながら。

「みんな、落ち着いて・・ホログラフだから・・・」

「ガッデーーーーム!!!」

・・・・・なんだか、少しだけ、功一達に、共感したくなるような。

「サノバビッーーーチ!!!」

 完全にキレて。再び、銃を構えようとしたとき、状況が変わる。


バサッ!


「うおっ!」

 功一達の支配下であるはずの魔物の一つ、ハーピーが、功一達に襲いかかったのだ。

「首魁は、こいつらか!お灸を据えてやる!!」

 園長の援護だ。

 取り返したシステムから、反撃を試みたみたいだ。

「くだらん!所詮は!幻!はったりにもならんわ!!」

「悔しかったら、!!ほんとに、火の雨でも降らせてみろ!」


カッチーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 今度は、はっきり聞こえた・・・ような気がした。

 幾度か発せられた、金属音。

 なんの音か、今わかった。

「ブモーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 怒りに、猛り狂ったみたいない咆哮を上げて、ミノタウロスが、二人に襲いかかった。

「だから!」

「意味ないんだって!」


ザシュ!


 映像でしかない戦斧が、横薙ぎに一閃、功一清隆の体を通過する。

「!」

「「ギャーーーーーーーーーーー!」」

 その時、二人胴体は血しぶきを上げて、切断されたのだった。

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