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「あーーー!やったやった」

「アイリちゃん。もうちょっと、言葉をおさえて」

 一志達が、ステージから出てくると、時を待たずして、茉璃香達も、違うゲートから出てきた。

「そっちも、クリアしたみたいですね」

「うん!ゾンビ共を次々に、けちらしてやったんだぞ!」

「二人で、戦車に乗ってね。街中をボンッボンッて」

 それって、EASYより手前の、チュートリアルモードなんじゃ・・

 まあ、二人がゾンビに蹂躙されるシーンなんて、想像したくもないから、いいか。

「さて、次はどこ行こうか?お前はどうする?」

「うん・・ずっと、このままでいい」

 一志に抱きついたままで、しのぶは、もう、お腹いっぱいみたいだ。

「わかるけど・・・」

 まだ、序盤である。

 二人の視線もせいもあって、ちょっと、居心地が悪かった。


「は~~~!凄いですね、このホログラフって。いえ、お客様に楽しんでもらうのが一番ですけど、我々にとっても」

「そうだろう、そうだろう。あらゆる世界も、キャラクターも、思いのままに出せて、それも、ほとんどプログラムがやってくれる」

 毎度の薄暗いモニター室で、二人の男が、感嘆の声を上げていた。

 思いっきりな体格差から、ひとくくりにしていいのか、判断に迷うが。

「この分だと、我々がすることが、なにもなくなりそうですね」

「いや、そこまでは・・さすがに、定期的なメンテナンスぐらいは、必要だろう」

「そうですね、つい、願望というか、期待みたいなものが、出てしまって」

 本来なら、セットの準備やら、中のスタッフへの指示配置やらで、とんでもない手間がかかるところが、立体映像の恩恵に、満足していた。

「うむ。思っていた以上の効果だな。依存しすぎると、問題もあるが」

「えっ!?問題が、ありますか?」

「う~む、たとえば、椅子を投写して、知らずに腰掛けた人に、尻もちつかせてしまうとかな」

「・・なるほど」

「室内を草原に投写して、目の前の柱に気づかないとかだな」

「確かに・・」

「なんだ?他に、用途を思いついたとか!?」

 テンションのやや落ちた月人に、それが悪用というか、イタズラめいたものではないかと、確認したくなった。

「いえ、考えただけです。例えば、大軍に、偽の道を見せて、罠に誘い込むとか・・」

「ふむ、戦記物のファンか。私なら、気軽に、ランニングマシーンに連動させて、世界中のどこでも、散歩できるとかかな」

「だったら、生身じゃいけないような、ジャングルや、海の底とか、火山地帯とかを背景にするのもありですね」

「疑似体験というなら、様々な、訓練にも、使えそうだ」

 それぞれ、幻を生み出せるというロマンに、心躍らされている。

 気持ちは、わかる。

 こんな、魔法のような装置を手に入れたなら、テンションも上がろう。

「あと、思いついたのが、世界的なお祭りとか、スポーツや音楽の祭典とか、エライ人の隣とかに、自身を割り込ませるとかですかね」

「いや、実在する人物を使用するのは、まずいだろう・・ドラマやアニメとかなら、いささか、許可も取りやすいだろうが」

「アニメ!それだ!!!もし、二次元のキャラクター達と、現実世界でふれあえるとしたら!お客さん!呼べますよ!!」

「人気アニメとのコラボか・・中毒者が出てしまいそうだが・・・」

 世の中、海を越えてでも、作品に使用された風景に、実際に、足を運ぶ人もいるのだから。

「いや、待て待て待て。会話ぐらいならともかく、ふれあうのは無理だろう。ホログラフなんだから」

「あっ!そうでした。ホログラフでした」


カチッ


 なにかどこかで、そんな金属的な音が聞こえたような気がした・・・

 誰の耳にも聞こえなかったのなら、気のせいでいいだろう。

「先走ってしまって。でも、お客さんを厳選してでも、今言った用途に使用したいですね」

「わからなくもないが・・映像であるこの長所短所、それをまとめて、ニーズに応えられるか・・・・・あと、ちょっと、思いついたんだけどな。孤児や難病で苦しんでる子とか招待して、お気に入りのキャラクターで、パーティーとか、やってみたいな」

「いいですね~。子供達にとって、自分が、大好きな人に、応援してもらえたりしたら、すごい力に変わりますからね」

 立体映像の可能性に、大いに盛り上がる。

 エンターテイメントという、それを最も生かせるであろう箇所に配置されたのだ、そうもなろう。

「それにしても、よく、これほどの装置、設置できましたね。うちが最初なのでしょうか?他で、聞いたことないんですけど」

「ああ、いつもの、つてだ。孤島に住む、とある老研究者の作でな・・」


 そのとき、園内のどこかで、強烈な悪寒に襲われた少年がいた。


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