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「よし、巨大ロボットせん滅作戦その三」
「名称は、もういい」
功一に一志がつっこんだが、事態は、そんなにのんきではない。
四人は今、島の反対側の砂浜に集まっている。
「これが最後の作戦だ。海に出られたら、もう俺たちに手出しできないからな」
その通りだが、功一が仕切るのは、なんだか気に入らない。
作戦は、いたってシンプル。
ロボットの現在位置と、その歩幅から、踏み込むであろう場所を特定して、そこに爆薬を仕掛けるというものだった。
(なぜそんなものが、都合よくあるかというと、あの老人の性格を考えれば、別に不思議ではない)
狙うは左足。
その爆発で、ロボットを方向転換させようというものだった。
海は広い。
進行方向を90°から200°の間で、変えることができれば、あとはロボット自らの前身で、深海に沈めることができる。
「おーし、清隆。衛星回線に割り込んで、頭上から計測だ。足裏の位置を到着時間とともに正確に割り出せ!」
「ラジャー、直ちにハック開始します」
なんだろう、この雰囲気を楽しんでるような、この二人の性格。
「・・・ねえ、もう、わたし、110番して、おまわりさんに助けてもらったほうがいいと、思うんだけど・・」
「・・・・・・・・」
常識的意見である。
しのぶに、そう耳打ちされて、一志は固まってしまった。
そりゃそうだ・・
うかつにも、一志自身、その選択に、思い当たらなかった。
「・・言われてみれば、そのとおりなんだがな、そうなると、ここに至るまでのいろいろをあれこれ聞かれるだろうし・・・」
「それが、どうかしたの?」
「あ!?いや、なんでもない」
事情徴収の名目で、いろいろ詮索されると、まずいことが結構あるのだ。
一志個人の都合だが、ほかの三人に・・・とくに、今横にいる、無垢な顔をしている少女には、聞かせたくない、家庭の事情なんかが。
「とにかくっ!身内の不始末なんだよ!人をあてにするのは最後の手段だ。やれることは全部やって、そして、後悔しようじゃないか!」
一志にしては珍しく、声を上げて言い放った。
両腕を広げ、覆いかかる大きなものを受け止めるかのポーズで・・・ではあったが、しのぶはクスクスと笑い出した。
「一志、その腰・・」
「あっ?!」
功一が指差したその先。
じつは、昼間取れなくなったご大層なベルトが、まだそのままになっていたりした。
こんななりで、かっこつけたら、まんまコスプレだ!
「とにかくやるぞ!あいつはそこまで来ているからな!」
一志は赤面した顔で、ありったけの爆薬を担ぎ始めるのだった。




