partⅡ②
「うちも大食いやないしそんなに食べるつもりやないから、これ全部は食べへんで?」
そう言って三角巾とエプロンを外し、俺にバナナジュースを渡して机を挟んで向かい合うように座る。
「まずはたこ焼き味から食べようか」
「その次はゴーヤ味とミカン味食べよう?」
俺は数少ない知っている雑学を披露してやろうと思い、関西弁の女子に聞いてみる。
「そうそう、蛇口からミカンジュースが出る小学校があるって知ってるか?」
「今時そんなん知らん奴少ないやろ、それ愛媛県やろ?どうせやったらもっとおもろいこと言ってほしいわ」
女子は若干機嫌を損ね、たこ焼き味のポテチをポリポリ食べる。
俺も食べてみる。何?これ、たこ焼きじゃなくてソースの味しか感じないんだが。こういうものか?
「今いるこの場所って、実はうちが創造した世界やねん」
「は…?意味がわからないんだけど…」
突然、本題を切り出すこの関西弁の女子は面倒くさそうに言い直す。
「だーかーらー、このうちら以外にいない学校創ったんがうちやねん。」うちのプライベートルームみたいな感じやと思っといて。
にしてはここ、かなり広いけどな。掃除とか色々大変そう。
「だとしたら君は何者なんだよ」
俺は鼻で笑う。
「よくぞ聞いてくれた!うちは謎の女子高生、名前はまだない」
ニヤリとキメ顔で女子はそう言った。
はぁ…
「それが言いたかっただけなんだな。で?君の名前、教えてくれよ。」
関西弁女子すると困った顔をした。
そんなことより。と関西弁の女子は楽しそうに言った。
「昨日、ある場所から美野さんにフラレた所を目撃して面白かってんなー。」
あの場面を見られたのか。顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「でも次の日、やっぱりかわいそうやなーって思ったから、この世界の家庭科室に呼んで慰める会を開こう思ってん。」
そう言ってたこ焼き味を食べきる前にゴーヤ味とミカン味の袋を開けた。
俺が口を開こうとすると、
「まぁ慰めるだけじゃなくて、今日は那谷君の願い事を叶えてあげよう思ってん。」
言い終わるとどこから出してきたのか、一般的な筆箱の大きさに紐の付いた小さな賽銭箱を机の上に置いた。