partⅡ①
階段を降りる時には無我夢中で気付かなかったが、いつからあったんだよ。
でも、等間隔でバナナの皮が置かれている先には何があるのか気になる。
もしかすると、これを捨てた奴が近くに居るかもしれない。だとしたらソイツに会えばここから出られる希望が持てるな。
大量のバナナの皮をいちいちゴミ箱に捨てていくつもりはない。どこまで続いているか辿ってみることにしよう。いったいどんだけ食ってんだよ、と勝手に決めつけてツッコんだ。
バカみたいに長い廊下を歩き終え、壁に突き当たった。更に左に続く廊下にもまだ皮が落ちていたが、家庭科室の前までだった。
そこから人の気配を感じる。微かに、何のメロディかは知らない鼻歌と何かを砕くような機械音が聞こえる。
やっと人に会える!俺は喜びのあまり勢いよくドアを開けた。
すると、家庭科室に居たのはショートカットの小柄な女子だった。三角巾とエプロン姿で一人楽しそうにバナナジュースを作っている。
そうか、ミキサーを使っている音だったのか…。
「あの、」
「おお、そっちから来てくれたんか。バナナジュース出来たら呼びに行こう思ってたのに。まぁそこの椅子に座っといてぇな。お菓子持ってくるし。」
「えっ…」
その女子は冷蔵庫の前にあるキッチンの下を漁り始めた。俺はいきなりの関西弁にたじろぎながらも、言われるままに椅子に座ったが再び立ち上がった。
「ちょっとまって!さっきのセリフはどういうことだよ!この学校の今の状況わかってるのか?」
「んーちゃんとわかってんでー。那谷君この学校から出られへんねやろ?」
「何で俺の名前を…」
「後でいろいろ教えてあげるから待っときー、今お菓子持ってくるからー」
そう言い終えると、両手いっぱいに無駄に種類の多い各県ご当地のポテチの袋を沢山抱えてやって来た。
持ってきたポテチの袋を机いっぱいに拡げる。
「じゃあどれから食べたい?たこ焼きにゴーヤ、讃岐うどん味とかいっぱいあんでー」
そこには、いかにも美味しくなさそうな味の袋ばかりあった。
「この会社の造るポテチって、まともな味が少ないことで有名じゃないか。何でこれをチョイスしたんだよ」
「最近ご当地の全種類制覇目指してんねんからちょっと協力してーや」
可愛い笑顔を俺に向けてくる。なんだか恥ずかしいからやめてくれ。
「わかったわかった。ここにあるポテチ全ては無理だけど少し協力してやるよ」