partⅠ①
美野が逃げるように去っていく。
あーあ。やっぱり告らんかったらよかったなー。
放課後に日直の美野さんを靴箱で待ち伏せての告白は流石にキモかったなー、自分で言うのもなんだけど。
話したことさえないのにいきなり告白されたら誰でもひくわ。まあ入学して半年も経つし、自身のイメージは暗くて地味な奴って通ってると思うから好印象すら持っていなかっただろうな。
俺がまだイケメンだったらまだ勝算はあっただろうけど、多分。
次の日の朝、いつものように教室に入ると、美野さんはまだ登校しておらず、何となくいつもとクラスの雰囲気が違う気がした。
女子たちが、俺に聞こえないように小声で話ながら俺をチラチラと見ている。
昨日のことがもう広まってるのか。速すぎだろ、今日は休めばよかった。あーもう帰りたい。
昼休みに教室の端の席で、ボッチで飯を食べていると、
「那谷君~、美野は学校休んだのにお前はフラた癖に平気な顔して学校来るとかメンタル強すぎだろー。」
意地悪いチャラ男が俺に向けて言ってくる。やめてくれ、周りに聞こえるようにそんなこと言われると流石に俺のメンタルがもたない。
このまま惨めな気持ちが続いて、やっと放課後になった。俺は先生に頼まれた用事を済ませて帰ろうとしたとき、教室に置いていた俺の鞄が消えていた。
今時幼稚なことをする奴がいるもんだな。教室に鞄は無いことを確認し、誰かに助けを乞おうと廊下に出てみると、窓の景色が違って見えた。
俺は驚いて窓を開けようとしたが鍵が掛かっていて開けることができなかった。
仕方なくガラス越しで外を見ると、空の色が緑や紫、黄色など様々な色に瞬きするたびに変化していて気分が悪かった。
「えっ?何で?何がどうなって…」
驚いて後退りしたとき、右足の踵でグニャリと何かを踏んでしまった。と気付いたときには大きく尻餅をついてしまった。そこには足跡がついたバナナの皮が落ちていた。
痛いめっちゃ痛い!、特に尾てい骨辺りが一番痛い!。