運命不良者 山嶺さやか~その3
「この世に生まれ落ちる時にですね、人は天界から運命を受けているんですよ。」
私は、あの後、とりあえずアパートの近くの公園にて彼女が何故私の事を知っているのかを尋ねた。
「ところがですね。まあ、あなた達に神様と呼ばれている我々、天界使はですね。」
今、私はまるで漫画の登場人物の、第一話のような心境だ。
「完璧ではないんですよ。そりゃそうですよ。天界が完璧なら人間も完璧に生まれ落ちる筈ですもんね。」
簡単に要約すると
意味が解らない‼
「待って、待って…………えっとあ……アズマちゃん?」
「アズメです。」
「あ、ごめん、アズメちゃん……一言いい?」
私の言葉で、彼女は先程まで見ていたメモの様な物を閉じて
「はい、なんですか?山嶺さやかさん。」
と、フルネームで呼びながら答えてくれる。
「アズメちゃん。大人をからかっちゃ駄目よ?あなたの苗字は何て言うの?誰から、私の事を聞いたの?」
私の言葉で、少女は、見えにくい表情を明らかに曇らせた。
「参りましたね。やはり信じてもらえませんか……」
少女は、それきり黙ってしまう。
私も困ってしまった。あ……ご飯、冷めちゃったろうな……
私は、袋から温くなった缶チューハイと、飲み切りパックの牛乳を出す。
そして、牛乳を少女に差し出す。
「はい、これ、あげるから。今日はもう帰りなさい。それと、もうこうやって、大人を困らせちゃ駄目よ。」
少し、どうでもよくなっていた。誰かは知らないが、また私の事をこうやって小さな子どもにまで言って。くだらない。と、心底思っていた。
「そうだ‼」突然少女は、そう言って、私が差し出した牛乳を受け取る。
「山嶺さやかさん。この牛乳。この牛乳をあなたが買ったのは、今日この時、私と出逢い、譲る「運命」だったと言えます。」
「はぁ?」
少女は、また訳の分からない事を言いだした。
「人生そのものを変える程の修復なら、『時空の鍵』が必要ですが、この程度なら。あなたの記憶の消失もきっと起こらないでしょう。」
私の困惑をよそに、少女は何か話を進めている。流石に少し腹が立ってきた。
「あのねぇ?あな………
言いかけたその時、私の目前に、彼女は先程の牛乳をつき出す。
「な………
「いいですか、山峰さやかさん。」私の言葉にクイ気味で少女は話す。
「今から、あなたと、この牛乳の運命を変えます。いいですか?あなたは、この牛乳を買った運命と、買わなかった運命。二つの記憶を今から体験します。」
「??????」もう、この子が何を言っているのか付いていけない
「それを持って、運命、時間の不良品というものの存在を信じてください。」
次の瞬間、眩い光が私の目を貫いた。