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時間屋さん~運命の修復使~  作者: ジョセフ武園
朱に交わらば赤くなる
3/52

運命不良者 山嶺さやか~その2

私は、しばらくその子と目が合う。


あれ?今日ってハロウィンか何かだっけ?と、その魔女の様な怪しい恰好の少女を暫し見つめるが

向こうも、一瞬もこちらから目を離さない。何、この子、やばい。

私は、振り返ると、部屋に鍵を掛けて、なるべくその子を見ない様に、階段へ駆け足で向かった。

関わらない方がいい。そう思った。



――――――――――――

コンビニで、自分よりも若い子たちが居ると、寂しくなる。

彼女達は、とても楽しそうに生きているからだ。

「はぁ」溜息を吐きながら、奥の飲料売り場でお酒をカゴに入れる。お酒ばっかりだとなんか恥ずかしいので、牛乳も一応買っとく。


「1096円になります。」

レジ袋に、重みを感じながら、私は帰途に着く。

「うん?」

アパートの入り口、子どもがまるで母親を待つように体育座りで待っていた。

ただし、その子は

出る時に居た、あの怪しい恰好の少女だ。

「あ。」

向こうも私に気付いた様だ。立ち上がり、きょろきょろと、お尻を見てはたいている。

どうしよう。

関わりたくないけど

この子、明らかに私に何か用事があるみたいだ。

部屋の前に居たのも、多分………偶然じゃない。


「あなた、どうしたの?こんな時間じゃ、ご両親心配してるわよ?」

早めに声を掛ける事にした。


すると、その子は私にしっかりと目を合せて言う。

山嶺(やまみね)さやかさん。昭和63年4月9日生まれ。血液型A型、山嶺恵三(けいぞう)さんと、山嶺啓子(けいこ)さんの間に、次女としてこの世に生を受け、誕生する。」


その言葉に、ギョッと私は驚き、手のレジ袋を落す。


「K大学を経て、㈱ミサカイに入社。2年目に上司と不倫の噂を流され、退社。その後も職を転々とするが長続きせず、現在は、春よりH出版にて、契約社員として務める。」


「あなた……何言って………」


「間違いありませんか?」


私の顔を、彼女は大きな帽子ごしに見つめてくる。


「あなた………誰?」

怯える私を見ると、少女は「ホ」と、胸を撫で下ろした。


「よかった。対象者にしか私の姿は見えないとはいえ、一人で任務にあたるのは、今回が初めてだったんですよ。あ~、間違いなく、対象者ご本人に会えて安心しました。」


私を置いて、少女は何かに納得する。


「ねぇ?あなた、何言ってるの?どこの子なの?何で、私の事をそんなに知ってるの?」

私はパニック寸前だ。ぎりぎり冷静にそう言えるのは、相手が子どもで

私より恐らくは弱者であろうからだ。


その言葉に、少女は「ハッ」としたように、身体を伸ばした。

「す、すいません‼まだ、こちらの紹介がまだでしたよね??」

「ご、ごごごごごめんなさい‼驚かせるつもりはなくて‼あわわわ、せ、先生、どんな風に言ってたかな?」

同時に、少女が慌てだした。その姿を見て、私は少し落ち着いた。

そして、そんな私に、彼女は言った。


「わ、私は、天界時間制定支部(てんかいじかんせいていしぶ)運命修復使(うんめいしゅうふくし)、アズメです。この度は、山嶺さんの不良品の時間を修復しに、天界から参りました‼ど、どうぞよろしくお願いします‼」


初夏の夜の風が、生暖かくその意味不明な言葉を私に流してきた。

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