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時間屋さん~運命の修復使~  作者: ジョセフ武園
PARANOIA
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運命不良者 ジェイムズ・リーヴィー~その2

3年前

英国、ロンドン


「ただいま。」

「おかえりー、お父さん。」

「おかえりなさい。あなた。」


私の名前は、ジェイムズ。英国の新聞社に勤めるジャーナリストだ。

昨年、大学時代から付き合っていた彼女と、念願の結婚を果たして、今に至る。


「お父さん。えほんよんでー。」

この子はアリス。今年で3歳になる。そうだ。結婚をしたのに、何故そんな大きな娘が居るのかと言うと。


私達は、子どもが欲しくて、順番を守る事をしなかったのだ。

そのせいで、妻は大学を辞める事になったのだが。


「はい、あなた。今日はあなたの好きな、スコッチエッグですよ。」


この笑顔を見る限り。彼女も私も、二人の決断に、全く後悔は無かったと。思える。


―――――――――――――


「ねぇ、そう言えば、あの気持ち悪い事件って、まだ続いてるの?」

食事が終わり、私がリビングで、娘を寝かしつけているとそんな事を言ってきた。


「ああ、先週、3人目の被害者が出たよ。近年でも類を見ない、凄惨な連続殺人事件だ。ロンドン中の新聞社も総力を挙げて、情報を探っているようだが……………」


「あなた…………お願いだから、危険な事はしないでね?私とアリスの為だと言って、あなたになにかあったら……………」

妻が、綺麗な瞳を落す。私は、娘をそっとソファーに寝かすと、ゆっくりと妻を抱きしめた。


「分かってるよ。メアリー。私は、君達を残して死んだりなんかしない。」


―――――――――――――――


「はい、ロンドン新聞社……………⁉ええ?何ですって?」

今日も、新聞社は朝から蜂の巣を突いた様な忙しさだ。


「おい‼誰か‼手の空いとる者は居らんか⁉」

先程、電報を受け取った編集長が、なにやら騒いでいる。


「Jだ‼Jが今晩、犯行を行うと匿名者から‼タレこみがあったそうだ‼」


Jと言うのは、新聞社内での、隠語だ。

それが、意味するのは勿論。

「切り裂きジャックか‼すごい特ダネじゃないですか‼」同僚のブラウンが興奮して叫ぶ。


「でも、一体、誰がそんな情報を………」

私の同期のアニーは、難しく、何かを考える様に眉間に皺を寄せていた。


「はいはいはいはい‼編集長‼俺と、アニーと、ジェイムズで取材と、情報の確認に行ってきます‼」

ブラウンが、予想もしていない事を言いだした。


「おい、ブラウン、何で私が?」

「そうよ、私とジェイムズまで巻き込まないでちょうだい‼」

しかし、私とアニーの扱いが、彼は非常に上手い。付き合いが長い事もあり、私とアニーが引き下がれない言葉を知っているのだ。


「おい、なんだよ?ジャーナリストとして

 この歴史的な無差別猟奇殺人事件を追う事に

 心が躍らねーのか⁉」


……………


その言葉を言われた以上、私とアニーは、彼とそのタレこみを確認せずにはいられなかった。


私も、アニーも、ブラウンも

皆、熱いほどのジャーナリズムを持っている。

この歴史的事件の記事が書けるとすれば

何をなげうっても。と思うのは当然だ。

私は、妻と娘の顔を思い出したが、顔を振って、その思いを心の奥に隠した。



――――――その夜―――――――


ロンドン住宅街。

事件の噂もあってか、住宅街だと言うのに、まるで人の気配がしない。

「へへへ、いいねぇ。まるで幽霊の(ゴーストタウン)だ。正に、凄惨な殺人事件におあえつらむきだ。」

ブラウンのそんな言葉に、アニーがはっきりと不快感を表す。

「悪趣味だわ。ブラウン。亡くなった女性達に呪われるわよ。」

ブラウンは、両手を広げてお道化た。


「さあ、とりあえず散会して、見張ろうや。」

暫らくして、ブラウンがそう言い、私達3人は、それぞれ、住宅街を巡回する事になった。

「あ、おい、アニー。」

別れ際、ブラウンがアニーに声を掛けた。

「なによ?」アニーが足を止めて、ブラウンに振り向いた。

「気をつけろよぉ?ただでさえ、相手は『売春婦』を狙ってる変態だぁ。お前とか、見ようによっちゃあ、そう見えるからなぁ?」

「ぽかん」アニーの手帳が、ブラウンの額に命中する。

「バカっ、あんた、マジ犠牲者に呪われろ‼」


「まぁ、なんだ?アニーだけじゃなく、ジェイムズもよ…………」

急に、ブラウンが、真面目な表情になる。

「何か、あったら、すぐに助けを呼べよ?いいな?」


……………

これが、私達がブラウンと友人関係を止めれない理由だ。



――――――――――――――――


街は、まるで別物だ。昼にランチを食べに毎日歩いている通りも

妻と娘と休日に歩くファッションショップの前も

まるで、違う。

まるで、街全体が何者かの胃袋に飲み込まれてしまっている様な、そんな息苦しさまで感じる。


一体、何時間過ぎたのか?

私は懐中時計を開くが。

「くそっ」ネジを巻き忘れていた。時計は9時40分で止まっている。何故、朝気付けなかったのか?


その時だった。


「カタッカタッカタッ。」

「‼」

前方から、足音が聞こえた。私は思わず息を飲む。すぐに、通りの角に隠れるが

「ハアハアハアハア‼」壊れた様に、息の音が止まらない。身体がガタガタと音を立てて震え続ける。

「アリス‼メアリー‼」私は、目を閉じ、愛する二人の名を呟く。

もし、本当にJを見つけたとしたら。

命の保証など無いからだ。いや、それどころか、一切の手掛かりが無い殺人犯‼

見つかれば、間違いなく殺される。

「カタッ。」足音が、私の隣で止まった。


「メアリーーーーー。」私は、その恐怖に思わず、目をギュッと閉じる。


「おい、ジェイムズじゃねぇか。」

汗で、ベトベトの瞼を開けると…………そこに居たのは………ブラウンだった。

「ブ、ブラウンかあ…………」私のその様子を見ると、彼は辺りを見渡した。


「一時間は探したけど、こりゃあ、なんもねぇな。ガセだ。ガセ。」

そう言うと、ブラウンは、続けて私に言う。

「おい、ところでアニーは?お前と同じ方向に行ったろ?」


「え?」

私は、彼の言葉を理解出来なかった。アニーが私と行動した?

「何を言っているんだ。ブラウン?君が三人で散会しようと、言ったんじゃないか。」

私の言葉に、ブラウンが眉をしかめる。


「なに?アニーは女だから、男といた方がいいって、お前が言ったんじゃないか。」


「え?」


その時だった。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼」


胃の中の物が全て噴き出てしまいそうな

それは、絶望も

恐怖も

人が到底、背負いきれない量の

それを帯びた。

悲鳴だった。


「‼」ブラウンは、凄まじい速度で、その悲鳴の聞こえた方に走り出した。

「ま、待って!ブラウン‼」

私も、吐き気を抑えつつ、ブラウンの後をフラフラと追う。


暫らく走ったのち

住宅街、昼下がりには数えきれない人で溢れる、ある通りの真ん中。

そこで、私達は、アニーと再会する。


ただ、そこに居たアニーは


無残に変わり果てた姿で、私達を見つめていた。

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