運命不良者 加宮皇一~その3
突然だった。
ある日の帰り道。
見るからに怪しそうな格好をした
親子?連れの二人に声を掛けられ。
僕は、意味不明な事を説明された。
「まぁ、落ち着いて聞け。まず、あんた達が生きているこの世界は、俺達天界のモノによって、創られ調和がとられているんだよ。ここじゃあ、驚いた事に、俺達の存在に気付いた奴らによって『神様』とか『仏様』と、呼ばれているらしいな。」
「だが、俺達は、あんたらが想像するような、絶対的なものじゃねぇ。失敗もすれば、個体の感情でとんでもない事もする……………奴も居る。」
「センセイの事ですか?」
隣の女の子がそう言うと、その長身の男は「ゴホン」と咳払いを一つ入れた。
「あんたの運命。とんでもない間違いがあったんだよ。」
僕は、周囲を伺う。誰か、人が通ったら、助けを呼ぼうとしていたのだ。
「……………あ~~~、悪いな。あんたと、ゆっくり話がしたかったから、この周囲の時間は俺が止めている。残念だが、誰も来んし。携帯電話とかいう機械も使えん。お前が納得するまで、解除する気も無いから、俺の話を信じろ。」
「せ、センセイ……………」
「あ、あんた達、一体何なんだ?僕に一体、何だっていうんだよ?」
心臓がバクバクなる。小さな女の子の方は、どうにか出来るだろうが。
あちらの男はどうだろう。線は細そうに感じるが、僕より20㎝は高そうだ。蓮二に近い。
「おい、ガキ。よく聞け。」
急に男は、声に凄みをつけてきた。
「俺の言う事を信じようが、信じまいがは、お前の勝手だ。
だが、俺達には、お前がこの話を信じて、正しい運命を選ぶ事を教える義務がある。」
「いいか、お前は4ヶ月後。子どもをトラックから庇って死ぬ。」
風も吹かない。本当にあの男の言う通り、時間が止まっている様な周囲から
ある筈の『音』までも消えた気がした。
「な。」
「なんだよ?あんたら…………いきなり声を掛けてきたと思ったら、今度は僕が死ぬ?
……………
ああ…………
恰好も変だし。あれですか?よく最近、芸能人とかで話題になる『占い師』ですか、あなた達は
悪いけど、うちにはお金はありません、変なツボも買う気はありません‼」
「いいか?4ヶ月後。つまり11月。お前は間違えた選択肢を選ぶと死ぬ。
その選択肢が『子どもをトラックから庇う』事だ。
この時、お前じゃない奴が本当は助けに行くんだ。
お前は、それを見ていればいい。
いいな?もし、11月、子どもを見ても、絶対に何もするな。」
だが、男は僕の態度も無視して、話を続けていく。
「いいな?
それがお前の『運命の修復』だ。
これにより、お前の運命は正しく動く。話はこれだけだ。」
そう言うと、隣の女の子に声を掛けて男は、僕に背を向けた。
「ま、待て‼何者かくらい名乗れ‼」あまりにも、乱暴に一方的な会話だったので、流石の僕も怒っていた。
「時間屋だ。」
「は?」
「お前さんらの世界では、壊れたモノや、物を譲る奴らをそういうんだろ?」
「俺達、二人の事は………『時間屋』と呼べ。」
「時間屋…………」
「帰る前に、とりあえず俺達の話が信じれる様に、一つ教えておこう。来週、お前は部活中に、バッティングピッチャーに指名されるだろう。だが、その時、断れ。」
「はあ?」この人、なんで僕が野球部だって……いや、僕の格好と頭を見れば解るか………
「その時、バッティングピッチャーをした奴は、打者が打ち返した球が眼球に当たって、大怪我をする。
お前が、それを引き受けたら、二度と野球が出来ない事になると思え。」
「……………」
そうして、その怪しい………時間屋、と名乗る二人は、僕の前から姿を消した。
驚いたのは、2時間は話をしていたはずなのに、時間が下校時から変わっていなかった事だ。
まるで、あの二人と会っている間。本当に、時間が止まっていた様に。
―――――――――――――
1週間後。
それは、唐突に、監督から言われた。
「おい、皇一。今日、お前、打撃投手、やってくれんか?」
「え?」
僕が驚いたのは、あの日の時間屋という男の言葉もあったからだ。
「今日、いつもやってくれとる加藤が、追試らしゅーてのぉ。お前がやってくれたら助かるんじゃが……」
胸が躍った。ここで、いい球を見せれば………今回の夏大会はもう無理だが、秋季大会にはベンチに入れるかもしれない。だが……………。
何故、そう思ったのかは………僕が時間屋の言う事を信じたのかは、はっきりとは解らない。
「すいません、昨日から爪が割れてしまって…………」
「………ほうか、じゃあしょうがないの………、おーーーーい、蓮二、お前今日、打撃投手入ってくれーー。」
監督の声に、遠くで「分かりましたーーーー。」と、弟の声が聞こえた。
俺は、チャンスを逃したのではないかという後悔で、そこを暫らく動けなかった。
そして
ふと、時間屋の言葉を思い出していた。
『その時、バッティングピッチャーをした奴は、打者が打ち返した球が眼球に当たって、大怪我をする。
お前が、それを引き受けたら、二度と野球が出来ない事になると思え』
…………
この忠告は
『僕』が、打撃投手に入った場合のみに起こる。という事だと思っていた。
しかし、時間屋は
『バッティングピッチャー』をした奴。と言った。
「カーーーーーーーーーーーーーン‼‼」
灼熱のグラウンドに、金属の乾いた音が
鳴り響いた。
直後。
グラウンドに
悲鳴が
木霊した。




