表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉が往くVRMMO  作者: 多摩季 熊
第一章:幕開
9/23

8.草原へ

 




 ただいま、諸君。



 昼食を済ませて筋トレをして戻ってきたら、ゲーム内が夕方になっていて驚いたよ。

 現実では12時半だったとしても、こちらでは18時らしい。時間の感覚が狂ってしまいそうだ。



 それにしても……夕陽に照らされる街というものは美しい。写真を撮れないことが実に悔やまれるよ。



 さて、景色も堪能したことだ。さっそく、狩りに向かうとするかね。



 メニュー画面の装備品倉庫から武器を取り出し、装備してから街の東へ向かって歩き始める。



 10分ほど歩き、東門に辿り着いた。といっても、そこまで立派なものではない。耐久性よりも出入りの利便性を向上させたような、簡素なものだ。

 それでも一応は門なので門番は居る。金属製のヘルムと鎧を装備した若い男が、門の左側に立っていた。左腕には盾が付けられ、腰に片手剣を携えている。



 ふむ。門番の彼、全体的に細身だが引き締まった良い筋肉だ。ただ、若干の偏りがあるね。左腕よりも、右腕の筋肉のほうが発達している。

 左腕も右腕くらい鍛えれば、もっと美しい肉体になるだろう。




「君は左腕をもう少し鍛えた方が良い。重心が少し右側に傾いてしまっている。それでは勿体無いよ」



「……え?あっ、はい!了解しましたっ!!」



 うむ、良い返事だ。若いって良いね。

 まぁ、私もまだまだ若輩者だがね。

 はっはっは。



 門番君にアドバイスをしてから、街の外に出る。夕暮れの紅に染まった草原と空に輝く月……本当に美しい。メニューなどに写真を撮る機能はないものか……。



 我慢できずにメニューを探していたら、『SS』というボタンを発見した。押してみると「カシャッ」というシャッター音がして、今見ている景色が画面に表示される。



 なるほど、スクリーンショットのことか。これで、この美しい景色を残すことができるね。



 2度、3度と景色を撮影して満足したので、先に進むことにする。



 日が沈んで辺りが若干暗くなってきた頃、ようやくモンスターを発見した。



 頭に槍の穂先のような立派なツノが生えた、1メートルを優に超える巨大なウサギが1匹……恐らくこいつが『ツノウサギ』というヤツだろうね。

 現実にも、コンチネンタル・ジャイアント・ラビットとか秋田ジャンボなどの品種のウサギが居るが、それでもだいたいサイズは60センチ程度。やはり、モンスターは大きいね。




 背中に装備していた大剣を構える。すると向こうも私に気づいたらしく、臨戦態勢に移行した。



 睨み合いの末、先に動いたのは……私だ。胸の高鳴りのあまり、待つことができなくてね。



 全力疾走でヤツに肉薄し、頭めがけて剣を振り下ろす。しかし、ヤツも一筋縄ではいかない。後ろ脚のバネを利用して右側に跳んで剣を避け、そのままツノを突き出して突進してきた。

 振り下ろした剣を地面スレスレで止め、返す刀でヤツを斬り払う。ツノに命中したらしく、甲高い音を立ててヤツが吹き飛んだ。勢いのままに剣を放り捨て、ヤツの横っ腹に全力の蹴りをかます。

 バキバキボキッ、と何かが折れるような音とともにヤツが2メートルほど飛んでいったが、確実に息の根を止めるために更に追撃する。

 危なそうなツノを両腕に力を込めて根元からへし折り、それをヤツの首に突き刺した。ピクピクと痙攣をした後、ヤツの瞳から生命の輝きが失われた。






【オオツノウサギを討伐しました】



【両手剣スキルのレベルが上がりました】



【体術スキルのレベルが上がりました】



【体術用武技『渾撃』を取得しました】





 ……危なかった。地面に剣が刺さる前に、咄嗟に筋肉で振り下ろしを止めていなければ、私の腹筋に穴が空いていただろうね。だが、実に心躍ったよ。やはり戦いには危険がないとね。



 というか、いまのツノウサギじゃなかったんだね。道理で強いと思ったよ。

 こんなのが初心者エリアにゴロゴロ居られたんじゃ、堪ったもんじゃない。私はともかく、初心者プレイヤーなら皆串刺しにされてしまうよ。



 とりあえず、このウサギ君を解体するかね。



 チュートリアルで入手した剥ぎ取りナイフを出現させ、オオツノウサギ君を解体していく。



 ひと通り終わらせて素材をメニューにしまった後、私は更なる獲物を求めて東に歩き始めた。







オオツノウサギはツノウサギの上位種です。

体長は150cmほど。夜の草原に稀に出現し、大きさに見合わない俊敏さで初心者プレイヤーを蹂躙します。

今回、この子は剛天さんに蹂躙されました(涙

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ