6.スキル確認
「リュウジ君じゃないか。調子はどうだい?」
「最高です!!しばらく店に寄れないかもしれないくらい最高です!!」
「はっはっは。私もね、しばらくは店を開けたくないくらい楽しいよ。もちろん、ちゃんと開けるけどね」
はっはっは、と2人して笑い合う。
それにしても、よく私だと分かったね。
「ふふ、当たり前じゃないですか。日本中を探しても、店長さんみたいな人は見つけられませんよ〜」
「そうですよ、マスター。自分がどれだけ日本人離れしているか、理解してるんですか?」
おっと、心の声が漏れていたらしい。答えてくれたのはリュウジ君の幼なじみのユキ君とリサ君だ。
私のことを『店長さん』と呼ぶ、栗色のショートヘアが似合うかわいらしい子がユキ君。アイドルだと言われても納得してしまいそうな整った顔立ちで、実際にスカウトされたこともあるのだとか。
その隣、切れ長の目に黒髪のポニーテールの子がリサ君。私のことを『マスター』と呼んでいる、クール系の美人さんだ。ユキ君に負けず劣らず綺麗な顔立ちをしており、長身も相まって、モデルさんのようである。
どちらもリュウジ君と同じ高校に通っている、『鬼茶』の常連さんだ。
いやぁ、2人とも手厳しい。特にリサ君、君の意見はいつも的を射ているから言い返せないよ。
ところで不思議に思ったのだが。
「リュウジ君、その刀は?」
「ふっふっふ、聞いて驚いてください。これ、β時代に俺が使ってた愛刀なんですよ」
βテスト参加者は、テスト時代に所持していた10等級のレア度のアイテムのうち、レア度2以下のアイテムを全て引き継ぐか、レア度3以上のアイテムを1つ受け継ぐかを選べるらしい。
リュウジ君がやけに立派な刀を装備していたから気になったのだが、なるほど、そういうわけか。
ちなみにリュウジ君の刀、レア度5なのだそうだ。これは、βテストで所持できる最高のレア度だとかなんとか。
うむ、とにかくリュウジ君が凄いプレイヤーらしいってことは伝わったよ。
「ところでマスター、なんで半裸なの」
「はっはっは、それはね。私の素晴らしい筋肉を「あっ、分かりました。大丈夫です」む?そうか?」
本当は、上衣がなかっただけなのだがね。見たところ、リュウジ君も上衣を着ているし、私にだけ配られていないようだ。
まったく、私が女だったらどうするつもりなのか。運営、しっかりと仕事をしなさいな。
「ところで店長、スキルの確認とかは済ませました?」
ん?……ああ、そういえば昨日のキャラクターメイキングのとき、スキル選択をしたね。
そうそう、2つほどランダムスキルを選んでいたから楽しみだと思っていたんだよ。
「すっかり忘れていたよ。リュウジ君、思い出させてくれてありがとう。お礼に「いや、大丈夫です!!」む?そうか?」
察しが早いな、素晴らしい。空気を読める人間は重用されるぞ、リュウジ君。
さて、スキルの確認は……そう、メニューだ。
メニューとは、頭の中で念じると現れるテキスト画面で、そこからログアウトをしたり、スキルやアーツの管理などを行うのだ。自分以外の誰にも見えないので、町中でも安心して眺めることができる。
また、フレンド登録した者と連絡を取ることも可能らしい。
こういうところはゲームらしいね。
とりあえず、リュウジ君に言われた通りにスキルの確認を行ってみる。
▽スキル画面▽
【両手剣術 Lv.2】
【鋼の肉体 Lv.1】
【肉体美 Lv.1】
【体術 Lv.1】
【解体 Lv.2】
NEW【鉄頭 Lv.1】
NEW【発光 Lv.1】
上の4つは私が選んだスキルだね。
【両手剣術】は、両手剣の扱い方が上達するスキルだね。
同じカテゴリーのスキルが【体術】……簡単に言えば殴り方とか蹴り方が上手くなるスキルだね。
で、私が心惹かれたのがこの【肉体美】。特定のポージング……ダブルバイセプスやサイドチェスト等、ボディビルのポーズを取ることによって、自身の防御力が上達するという
スキルだ。まさに筋肉の良さを広めるためにあるようなものだね。このスキルを取らない理由が私には無いよ。
【鋼の肉体】は、スキルレベルに応じて肉体が丈夫になるスキルらしい。私の鋼の筋肉も相まって、凄いことになるだろうね。
で、【解体】のスキルは『チュートリアル:剥ぎ取り』でビッグコッコ君を掻っ捌いて獲得したスキルだ。
鶏の捌き方は元から知っていたから必要なかったけど、ゴブリンの捌き方なんて知らないからね。これがあると非常に助かる。
『剥ぎ取り』と言いつつ【解体】のスキルが手に入ったのは何故だろうね。
最後に、下の2つ……【鉄頭】と【発光】が、ランダムで獲得したスキルらしい。
リュウジ君に聞いたところ、【鉄頭】どうやら頭が硬くなるスキルのようだ。しかも、【石頭】というスキルの上位スキルらしく、私としては非常に嬉しい。流石の私にも、頭には筋肉の鎧がないからね。
【発光】は文字通り、体の一部だけ光らせたり、全身を発光させたりと面白そうなスキルだ。レベルが上がったら、太○拳みたいなアーツとか覚えられそうだね。もっとも、私は坊主ではないけどね。はっはっは。
いやぁ、リュウジ君。本当に助かったよ。