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筋肉が往くVRMMO  作者: 多摩季 熊
第一章:幕開
21/23

20.育成計画

久しぶりの更新です

 




 時刻は現在16時。現実だと、23時半と言ったところだね。あれから1時間以上経つが、若者くんは頑張っているよ。



「ほら、あと17回だ。頑張りなさい」


「うるせぇ……言われなくても……くっ……頑張ってる……っての……」



 うむ。まだまだ元気があるようで何よりだ。




 最初こそ逃げ出そうとしていた若者くんだが、私の筋肉を前にしては逃亡などできるはずもない。即座に捕まえ、ついでに彼の上衣を脱がせてから、そこで腕立てを始めさせた。



 それから休憩を挟みつつ、プランク、サイドプランク等を軽めに行い、全身をくまなく鍛えるためのコツを教えておく。



 プランクは腹筋や背筋を鍛えるトレーニングの一種で、両肘とつま先の4カ所で体を支え、1分ほど浮かせるという簡単なものだ。休憩を挟みつつ、3〜4回行うと良い。

 腹筋といえば、寝た状態から起き上がるクランチなどが有名だが、あれは腰を痛めやすいのでね。若者くんの将来を案じて、腰に優しいプランクを教える事にした。



 ちなみにプランクのコツは、“体を板にする”ことだ。



 物理的な話ではなく、板のように真っ直ぐにするという意味だね。そうすることによって、プランクは最大の効果を発揮する。視線も上げすぎず下げすぎず、腹筋には力を込めること。姿勢がつい反りがちになる若者くんにも、そう教え込んだよ。



 次にサイドプランクだが、小学校の組み体操で行った“扇”、その両サイドの者を思い浮かべて貰えば大体は良いだろう。



 違う箇所は、肘を着くか否かくらいだね。



 肘を地に着き、体を一直線にしたまま腰を浮かす。このまま、姿勢を15秒ほど維持。休憩を挟みつつ、これを3回ほど行えば腹斜筋や腹筋を刺激できる。


 サイドプランクのコツは、腰を真っ直ぐ浮かすことだね。若者くんのように腰が下がったり上がったりしないことが重要だ。もちろん、その点は若者くんにもしっかりと教育を済ませてあるさ。



 そして現在、スクワット50回に至ると。



 ……さて、ここまで来て何だが、私はとても重大なことを失念していた。ここがゲームの中であるとかそういうことではない。




「おい……ぜぇ……終わったぞ……ぜぇ……そろそろ……帰らせろ……」


「駄目だ。私はまだ、とても大切なことを教えていない」



 そう、それは。








「食事だ」


「……はっ?」



 これだけ再現度の高いゲームだ。恐らく、栄養価も現実と似たようなものになっているだろう。


 だが、ゲーム内にプロテインは無い。故に彼の肉体には、肝心のタンパク質がまるで足りていない。


 彼に、ゲーム内での食生活を聞いてみたところ。



「パンみたいなやつと屋台の串焼きくらいしか食ってない」



 彼の体重は58kg。1日に筋肉の再生に必要なタンパク質は体重1kgに対して2.2g……つまり、彼が筋肉を再生させるために必要なタンパク質はおよそ130g。そのような粗末な食事では、まるで足りないのだ。



 うむ……どうすべきか。



 私ともあろうものが、こんな初歩の初歩を失念していたとは情け無い。何か、多量にタンパク質を摂取できるもの……あ。



 そういえば、あるね。




「はっはっは!すっかり失念していたよ。では早速、狩りに行こうじゃないか!」


「いや何処に……てか何を狩りに?あと上衣と武器返せ!!」


「いや、素手でも問題ない。むしろ、素手の方が望ましい」


「は?」



 そう、その獲物とは。












「ビッグコッコの…………『卵』狩りだよ」


「……うん?」



 はっはっは。このくだり2回目ですまないね。とりあえず、ついてきたまえ。

 事情が飲み込めない様子の若者くんを引きずりながら、私は獲物を探した。






 ◇◇◇






 東の草原を更に東へ進んで10分ほど。草丈も膝上まで達し始めた。





「ーーーー見つけたぞ」



 草を掻き分け、いくらか斑らのある白色の物体を見つけた。数は3つ。うむ、鶏の卵に間違いはないね。



「では少年。私が1つ持つから、君は2つ運びなさい」


「いや、あんたの方が」


「はっはっは。これもトレーニングだと思いなさい。ほら、早くしないと親鶏が来るぞ?」




 若者君の背中を叩き、卵を運ばせる。卵の直径は約60センチメートル。重さは5〜6㎏くらいだね。それが2つとなると、若者君には少し厳しいかな?



 それにしても、大きい卵だ。ダチョウの卵の4倍近いね。ビッグコッコ君の半分ほどもあるよ。



 はっはっは、親鶏の半分もある卵って……。






 ……何かが、おかしい。







「なぁ……この卵、やっぱりデカ過ぎね?」





「ゴグゥエェエェェェェエェ!!!!」




 私と若者君の疑問に答えるように、怒号の如き咆哮が鳴り響いた。












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