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筋肉が往くVRMMO  作者: 多摩季 熊
第一章:幕開
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1.始まりの朝

 


 私の名は鬼塚(おにづか) 剛天(ごうてん)。某都市のそれなりに人通りのある通りで祖父から継いだ喫茶店を経営している、29歳独身だ。



 話は変わるが、つい先日、新作のVRMMOが発売されたらしい。正式サービスの開始が5日後であることも、興奮気味の常連の学生さんたちが教えてくれた。



 何でもそのゲーム、もの凄くリアルなんだとか。

 敵を斬れば血は出るし、自分が斬られたら痛みも感じる。ゲーム内で鍛えれば筋肉がつくし、過ごした分だけ髪も伸びるそうだ。



 そう、ゲームなのに鍛えれば筋肉がつくのだ!!



 従来のゲームでは筋肉量を決められるのは初回のキャラエディットのみで、筋肉の成長など無かった。



 だがしかし、このゲームにはそれがある。現代日本ではまず不可能な『戦闘』という行為を通じて己が筋肉の限界を確かめるだけでなく、さらなる高みを目指す事ができるのだ。これを買わねば男が廃る。



 と、喜び勇んで電気屋に向かったものの、件のゲームは売り切れ。しかも、入荷の予定も未定ときた。




「ううむ、どうしたものか」



「あれ?店長が悩み事なんて珍しいですね?」




 おっと、心の声が漏れていたようだ。

 反応してくれたのはここの常連の一人、リュウジ君。近所の高校に通う学生さんである。




「いや、実は欲しいゲームが売り切れでね。入荷も未定らしい」



「えええ!!店長ゲームなんてやるんですか!?」




 心底驚いたという顔をするリュウジ君。

 失礼な。私だってスポーツや筋トレ以外の娯楽を楽しむ事もあるのだよ。極稀に。

 リュウジ君には「偶にな」と答えておいた。




「あー!!もしかして、『Somnium-Res』ですか!?それなら俺持ってますよ!!」




 よく分かったなリュウジ君。そして持っていたのかリュウジ君。羨ましい。

 まあ、発売から3日も後にゲームの存在を知ったのだ。仕方がない。

 それは良いとして、自慢かね?リュウジ君よ。




「いや、自慢じゃなくてですね!!俺、そのゲーム二台持ってるんです!!良かったら店長に売りますよ」



「なんと!!」




 これは思わぬ幸運。鴨が葱を背負ってくるとはこの事だ。しかし、気になる事もある。




「だがリュウジ君。二台もどうやって手に入れたんだい?」



「これは自慢になりますが!!俺、『Somnium-Res』のベータテスト参加者だったんですよ!!」




 ベータテスト、簡単に言えばゲームの先行体験って事だ。そのベータテスト時に配布された機材は正式版と同じもので、参加者は正式版を買わずして『Somnium-Res』がプレイ出来るのだという。



 ちなみにリュウジ君には弟が居て、その弟君のためにもう一台ゲーム機を買ったのだそう。

 うむ。弟想いの良い兄だ。




「ところが発売日前に弟の奴が『Somnium-Res』欲しさに応募した懸賞が当選してまして。一台余る事になったんです」




 それで二台持っていると。

 うーむ。確かにありがたい申し出ではあるが、流石の私でも少し気が引けてしまう。今ならネットオークションにでも出せば、相場の数倍近い値段で売れるだろうに。




「実は『Somnium-Res』は転売規制が厳しくて。まだネットオークションにも出せないんです。置き場所にも困ってるし、店長が買ってくれた方がありがたいんですよ」




 なるほど、納得だ。うむ、うだうだ悩むなんて私らしくないな。

 リュウジ君はお金が戻るわ部屋のスペースが広がるわで一石二鳥。私はゲームができる。

 まさにWin-Winな取り引きだ。こうなったら買うしかないだろう。




「よし、買おう。リュウジ君、本当にありがとう!!お礼に、筋肉による熱い抱擁をしてあげよう!!」



「いや、いいです」




 冗談だ冗談。お礼には一週間分の飲食無料券を渡しておこう。



 その後、本体の受け渡しについて話をした後、リュウジ君は店を出た。

 なんでも、店まで持ってきてくれるらしい。

 お礼の無料券、もう一枚増やしておこう。

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