17.感謝
歩きながらふと思う。
……そういえばスキルの確認をしていなかったね。
うむ、後で後でと言っているうちにまた忘れてしまうだろうし、さっそく確認をしようか。
そう思いスキル確認画面を開くと同時に、凄まじいまでのテキスト通知が表示された。
騒がしいので割愛して、スキル画面だけを見るとしよう。
▽スキル画面▽
【両手剣術 Lv.3】ー1upー
【鋼の肉体 Lv.6】ー5upー
【肉体美 Lv.2】ー1upー
【体術 Lv.7】ー6upー
【解体 Lv.2】
【鉄頭 Lv.3】ー2upー
【発光 Lv.4】ー3upー
NEW【投擲 Lv.1】
と、こんな感じだね。鋼の肉体やら体術やら鉄頭はホブゴブリン君と殴り合ったときに上がったらしい。いやあ、気がつかなかった。
いくら戦闘中に通知が来ないと言ってもね、うむ。これからは小まめにチェックするとしよう。
ちなみに、スキルレベルが上がっただけではなく、武技も3つほど手に入れたようだ。
【体術武技『刃撃』を獲得しました】
【鋼体武技『不動硬化』を獲得しました】
【発光武技『閃身光』を獲得しました】
テキストを読んだところ、『刃撃』は手刀を繰り出すアーツらしい。ただし、本当に刀のように切れるのだとか。これは面白い。後で試してみよう。
『不動硬化』は文字通り、一定時間その場から動けなくなるかわりに身体が硬化するというものだ。いざというときに頼りになるアーツだね。
最後に『閃身光』。全身の筋肉が光を放ち、相手の視界を阻害するという……いわゆる、目くらましだ。うむ、発光するのが『筋肉』という点が実に素晴らしいね!
などなど、歩きながら確認をしていたら、東門に着いたようだ。
門には門番君と……彼のガールフレンドらしき人物が賑やかに談笑している。
白い肌。肩口のあたりで切り揃えられた銀髪が美しく輝き、空のように澄んだ蒼色の瞳も相まって、ある種の神秘性すら感じさせるような美しい少女だ。眼鏡がとても似合いそうな顔立ちで、身長は女子の中では高い部類に入るだろう。
スラリとした体つきをしているものの、軽鎧の上からでも分かる腰周りの丸みや胸当て部分の女性らしい膨らみがある。さぞや世の男を魅了しているであろうことは想像に難くない。
加えて、その筋肉。引き締まった脚からも分かるように、鍛錬も毎日しっかりとしているのだろう。細すぎず太すぎず、実に美しい脚のラインだ。
うむ……思わず見惚れてしまったよ。やるじゃないか、門番君。
などと考えていたら、門番君がこちらに気付いたらしく、瞬時に鬼の形相で駆けてきた。
ふむ。私がたった1回しか教えていないことをよく理解している。飲み込みが早いね。
「見つけたぞ!!次こそは確実に逃がさ「【閃身光】」ウワァアアァァァアッ!!?」
目を抑え、のたうちまわる門番君。
はっはっは。門番君よ、そんな鬼のような顔をしていたら、ガールフレンドに逃げられてしまうからね?ここは君に大人しくなってもらうためにも、こうするしかなかったのだよ。
……昼間だというのに私の視界すら焼いてしまうような眩しさだったのは予想外だったが。
幸い、少女には被害が及ばなかったらしく、鈴の音のような美しい声でころころと笑っている。
が、やがて笑いが収まると真剣な顔つきになり、こちらに向かって歩いてきた。
そして……深々と頭を下げた。
「一昨日は私の命を助けていただき、ありがとうございました。……この恩は、いつか必ずお返し致します」
なんと、彼女は昨日(ゲーム内では一昨日)助けた、血に塗れた少女であったのだ。
「いやいや、私は当然のことをしたまでさ。大したことではないよ」
「ですが、そのおかげで私は生き延びることができました。本当に、感謝しています」
ありがとうございました、と頭を下げ続ける少女。少しむず痒くなってきたね。
彼女の気持ちを無碍にするわけにもいかないし、とりあえずその感謝だけは受けとっておこうか。
「うむ、その気持ちは受けとっておくよ。では、私はこれにて」
「待ってください!……お名前を、教えていただけませんか……?」
「はっはっは。名乗るほどの者ではないよ」
と言って、私はその場を走り去った。
いやあ、このセリフ、やはり男であれば一度は言ってみたい言葉だね。うむ。実に気持ちが良いよ。
「待てぇえぇ!!剛天さん、話はまだ終わってないだろうがぁぁあ!!」
あっ、門番君。すまない。
というか、名前を呼んだら駄目じゃないか。はっはっは。
祝、門番君の叫びが届いた件。