16.依頼達成
「ふぅ……ごちそうさまでした。いやぁ、やっぱり店長が作る料理は最高ですわ」
「はっはっは。そういってもらえると嬉しいよ」
作り甲斐があるというものだ。
「あっ、そろそろ帰ってログインしないと」
「ほどほどにね。休み中の課題もしっかりやるんだよ」
「もちろんです!それじゃ店長、また夕飯食べに来ますわ」
「うむ。またね、リュウジ君」
ありがとうございましたー、と店を出るリュウジ君。時刻は現在7時30分。そろそろお客さんも増えてくるし、珈琲豆の焙煎を始めておこう。
さて、今日も1日頑張ろうか。
◇◇◇
こんばんは、諸君。
時刻は現在21時30分。仕事と夕飯と筋トレを終え、今ログインしたところだ。
就寝時間まであと1時間半しかないが、ゲーム内では3時間もある。
それに、ゲーム内で就寝を済ませれば……うむ。我ながら名案だね。
半日くらいの時間はありそうだ。
さて、私は今、昨夜ログアウトした場所……すなわち、東門に居るわけだが。
「剛天さん……いや、剛天。今まで何処に行ってやがったこのやろう!!」
いつも以上に賑やかな門番君がこちらに走ってきた。
うむ、なかなかに効率の良い筋肉の動かし方だ。これならば、かなりの速度が出るだろうね。
「だがしかし門番君、背筋をもう少し伸ばして肩の力を抜きなさい。大臀筋を引き締めて、腕は肩甲骨周りから動かすように」
「いやいや、そんな話はしてねえ……あ、こんな感じですか?」
「うむ、実に良い感じだね。その走りなら、獲物を咥えた黒狼君を捕まえられるよ」
「は、はい……?黒狼ですか……?」
うむ。と言っても、門番君が黒狼君を捕まえるには腕力が少し足りなそうだがね。
そうそう、黒狼で思い出した。
「そう言えば、ギルドにクエスト報告に行ってなかった。ちょっと行ってくるよ。ではまた会おう、門番君」
「あ、 はい……いやいや待て待て待て待て!!今日という今日は……ああ、無理だ。……もう転勤したい」
告げるや否や、私は疾走する。門番君が何か言っていたような気がするが、よく聞こえなかったね。ギルドにクエスト報告を終えたら、またすぐに戻るとしよう。
あと……見ているか、門番君。これが私の最速の走り方だ。腕の振り方、伸ばした背筋、そしてこの流動する筋肉……実に美しいとは思わないかね。
まあ、もう見えていないだろうけどね。はっはっは。
などと考えている間にギルドに到着した。
カウンターは……お、今日も強面君が居るね。そこにしようか。
「また会ったね強面君。今日はゴブリン討伐のクエスト報告に来たよ」
「……強面君……?……まあ良い、討伐証明部位を見せろ」
ゴブリンの両耳を20つ見せる。これでクエストは完了だね。
「ご苦労さん。報酬の2000ゴルドだ」
「ありがとう。あと、ギルドではモンスターの素材の買取をしていると聞いたのだが」
「ああ、それなら1番奥のカウンターが素材買取所だ」
礼を言ってカウンターを後にする。
向かうのは奥の素材買取所とやらだね。
買取所には、眼鏡を掛けた老人が一人座っていた。
「ご老人、この素材の買取りを頼む」
渡したのは黒狼君の毛皮とオオツノウサギ君の角だ。私が持っていても、役に立ちそうにはないのでね。
老人は丁寧に素材の状態を確認し、全部で3400ゴルドで買取ってくれた。
これで私の所持金は合計7000ゴルド……ふむ、少々心もとないね。
狩りにでも出かけようか。
その前に、約束通り門番君のところに行ってからだけどね。
これからの予定を考えつつ、私はギルドを後にした。




