0.プロローグ
プロローグは三人称視点です。次回から、主人公による一人称視点が始まります。
読み飛ばしても本編にあまり影響はありません。
初投稿です。至らぬ点も多々ありますが、生暖かい目で見守っていただけたら幸いです。
休日の昼間、一人の男が電気屋のレジカウンター横に展示してあるゲーム機を眺めていた。
男は2メートルを優に超える大男。Tシャツの上からでも分かる、はち切れんばかりの筋肉も相まって、男の威圧感たるや、会計の為に客が近寄る事ができないほど。カウンター内にいる店員は冷や汗のあまり顔がびしょ濡れである。
五分程、男はゲーム機と睨み合いをしていたが、唐突に店員の方へ向き直ると言った。
「すまないが、このゲームの在庫はまだあるだろうか?」
男が示す先には、先日発売されたばかりのVRMMO『Somnium-Res』があった。
◇◇◇
ーー『Somnium-Res』
世界初のVRゲームの完成時より計画され、半世紀もの年月をかけて製作されたVRMMO。
つまり、仮想空間に意識を接続し、擬似的な五感を再現する事で行われる大規模オンラインゲームのことである。
夢と現実の名を冠するこのゲームにはレベルアップによるプレイヤーの成長が存在しない。代わりにスキルには熟練度が存在し、己の力でスキルを手に入れ、プレイヤーを成長させていくのだ。
スキルを駆使してモンスターを狩る者もいれば、鍛冶師として武器や防具を作るもいる。畑で農作業をしようが街中で大道芸をやろうが、ゲームの楽しみ方はその人次第。
職業という概念が存在しない為、朝まで鍛冶師をしていた人物が、昼には料理人になっている事もある。
また、このゲームにはスキル以外にもう一つ、特徴的なシステムが存在する。
それは、身体のリアルな変化。
老化で皺が増えたりはしないが、ゲーム内で過ごした分だけ髪は伸びるし、日光に当たり続ければ肌の色も変化する。徹夜を続ければ目の下にクマができるし、筋トレをすれば筋肉をつける事だってできるのだ。
◇◇◇
あまりのリアルさに、ベータテスト開始直後から多大な注目を集めたこのゲーム。正式版の発売日、各地の電気屋に長蛇の列が出来ていたであろう事は、想像に難くない。
「も、申し訳ございませんが、こちらのゲームは大変人気でして。発売日当日に売り切れてしまい、在庫はもう残っておりません。入荷も未定となっております」
当然ながら、売れ残りなどあるはずもなかった。
男は一言、「そうか」とだけ言って店を後にした。
誤字脱字、不自然な描写、どんどん指摘してください。