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サイケデリック・ワルツ  作者: 雨宮吾子
覆載の結末
11/11

01

 そこは真っ白な空間だった。壁も天井も床も、ガラスが敷きつめられていて、白い光を放っている。ちょうど学校の体育館のバスケットコート二つ分くらいの広さといったところか。

 振り返れば、パイプイスにある人物が座っている。といっても精巧に作られたマネキンのように微動だにしない。そしてやはり人形のように、行儀良くイスに収まっている。

 雪定馨はその正面に立った。地面に落ちた水滴が弾けるように、馨の脳内にその人物の名前が広がった。


『紫村桃子』


 馨はその人物の様子を観察した。深紅のドレスにガスマスク、ナンセンスとしか言いようのない出で立ちだ。この部屋では桃子にしっかりと足が付いていることが不思議で、思わずそのほっそりとした足に見とれてしまった。と、不意にその足がむずむずと動いた。

 馨は桃子に意識があるのを確かめると、嘲笑気味にこう言った。


「なあ、寝たふりはやめないか」


 ガスマスク越しに桃子が笑った。その笑い声があまりにも乾いていたので、馨はあまり良い気分がしなかった。


「どう、似合ってるかしら」

「女の子にガスマスクは似合わないよ」

「そうかしら。まあ、居心地は良くないわね」


 ガスマスクを脱いだ桃子は、髪の乱れを直しながらそう言った。何かが吹っ切れたような、そんな顔をしていた。


「ね、そろそろ終わりにしましょう。もう私のことなんて、誰も崇めはしないから」

「そうだね。きっと、これで終わりにしていいんだと思う」


 二人は向かい合うと、そっと握手を交わした。その結節点から、世界が崩れていくようだった。

 まさにこのとき、世界は滅びを迎えてしまったのだ。

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