スタート
僕、深見一樹は高校2年生で、顔は男前、運動神経抜群、成績優秀。
だが、彼女どころか、友達もいなかった。でもいじめられているわけではない。
理由は自分でも分からない。だから余計悲しかった。つまらなかった。
そんな僕は異世界に行っている妄想をしている。そして、そこでは、相棒の妖精ルミカルがいる。
呪文が使え、僕は超能力を持っている。だがそれは、妄想にしか過ぎない。
僕はそのことを思い出すたびに悲しくなる。友達がいないという事よりも。
そんな、僕がある日、普段見ないテレビをたまたま見ていると、コスプレ特集という物をやっていた。
なんてしょうもない、と思い、テレビを消そうとした時、ふと思いついた。
妄想を現実に、つまり異世界でしたい事を現実でやってやればいいのではないかと。
僕は、急いで部屋に戻り、叫んだ「ルミカル」と。
朝、起きるとまず「ルミカルおはよう」と言い、制服に着替える。
僕は、現実では進学校である、日本学院に通っている。でも、僕の頭の中では今日から聖ランケトプス学院に通っていることになっている。ついでに学校に着くまでがクラス分け試験なのだ。
僕の頭の中でチャイムがなり、部屋のドアを開けた。
生まれてから今までずっと過ごしてきた家が、ゴルンゴーゾラ平原に見える。
僕は勇気を持って一歩を踏み出した。順調に進んでいると、大きな川が見えてきた。階段という。
「なんて、急なんだ」思わず声に出す。
「ルミカル行くぞ」ズボンをまくり、川に入りだした。
一歩ずつ慎重に歩いていく。が、深みに入り、滑ってしまう。実際は妄想に夢中になりすぎ、下を見ていなくて、こけかけただけだが。
「ルミカル。大丈夫か。」と叫ぶ。
「良かった。最後のひと踏ん張りだ」
決して誰も返事はしていない。
「なんだ、この怪物は」
親だ。
「これを倒さないと、s組には入れないということか」
「ルミカル。呪文を教えてくれ」
「ウルジーネプラコイタ」
すると目の前の怪物は急にオロオロとしだす。
「よし、倒したぞ」雄たけびが家の中に虚しく響き渡る。
そして、母親が泣きだし、父親も明らかに動揺している。
「お前、自分の名前は何だ?」
「僕はルナジーニ・オブライエン。聖ランケトプス学院1年」
母親が先ほどより、激しく泣き出す。
父親はルナジーニの手を握り、母に言った。
「精神科に行ってくる。」
その言葉に一樹は慌てて
「嘘です。冗談です。僕は一樹です。」と言う。
「なら、ズボンをちゃんと履け」と言い残し、ドアを乱暴に開け、家を出て行った。
母も急に泣きやみ「弁当は渡さない」などと言いだす始末である。
作ってるなら渡せよと、思ったが、僕はルナジーニ・オブライエンである事を思い出し、
急いで玄関を出た。
ゴルンゴーゾラ平原をでて、クリストファーの森に入る。
ちっ。へんなモンスタのせいで。と思っていると、前から大きな熊のような怪物が近づいてくる。
そして、声をあげ、ルナジーニ・オブライエンを威嚇する。
実際は大きなトラックなのだが、そんなことはどうだっていい。
僕は、そんな威嚇などもろともせず、不動の姿勢で怪物をにらみ続ける。
すると、怪物の勢いが次第に落ち始め、ついに止まる。
そして、中から小さな物体が降りてくる。
子どもなのか?
すると、周りも大きな熊のような怪物と子ども(?)ばかりになる。
「お前なんだよ」と怪物が僕たち人間と同じ言葉をしゃべり、僕を威嚇する。
「ウルジーネプラコイタ」
何も変わらない。ただ、小さいほうの怪物から笑い声が聞こえてくる。
しかも、その人数は段々と増えてくる。
「ウルジーネプラコイタ」今度はもっと大きな声で言う。
目の前の怪物はまたもや何も変わらない。しかし、小さいほうの怪物からの笑い声は明らかに大きくなった。
「お前、その制服は日本学院だな」
「違う、聖ランケトプス学院だ」
「お前、薬でもやっているのか?」
「だまれ、怪物」
どこからか、「こんな子相手にしない方がいい。」という声が聞こえてきた。
「まぁ、警察が来るのを待つか」たばこをふかしながら言う。
その言葉に一樹は反応する。
「嘘です。冗談です。日本学院の生徒です。」先ほどと、同じような言葉を言う。
「じゃあ、なんであんな事を言った。」
「冗談で」
「道路交通法違反だな」
一樹は凍りついた。野次馬もこのディベートを真剣に見守っている。
「け、警察には」
「しょうがねーな。今回は許してやる。」野次馬から拍手が起こった。
「ありがとうございます」
「2度とこんなことをするなよ」
そう言って、トラックに乗って去って行った。
さぁルミカルあと少しだ。心の中でルナジーニは言う。
ルナジーニは「リングロングラン」と呟き、走った。
クリストファーの森からもうすぐで抜けられる。
抜けたら、学校が見える。中世ヨーロッパの城風の。
「おぉ」思わずルナジーニは声が出る。
これが、ランケトプスか。
「こんにちは」一樹は突然あいさつされ、戸惑う。
が、すぐに校長先生だと気づく。
「こんにちは」和風でどこかの寺かと間違う人もいる、校舎の目の前で言う。
一樹は「一樹」としてゴールを跨いだのが悔しかった。
そして校長に向かって呟いた。
「ウルジーネプラコイタ」
何も変わらなかった。
教室での僕の席は1番後ろの席である。
なので、たっぷりとルミカルと話しをし、時々ノートにメモをした。
呪文の使い方などをだ。
すると、「深見君」数学の佐伯女史に指名される。
「はい」一樹は言う。
「この問題の答えは?」
「分かりません」
「さっきと同じ問題です。ノートを見なさい。」
ガイナールビチン。ウルジーネプラコイタより強い
セキマヅユ。愛を感じさせる。
ソウカカイガッ。人に嘘を信じさせる。
ノートにはこう書かれていた。
「すいません。寝てました。」
「いや、あなたは起きてノートを書いてました。ノートを持ってきなさい」
一樹は焦った。
「もう、私が見に行きます」
大股で女史がこっちに来る。
そして、ノートを見る。
「何ですか。これは。あなたは、いい年して魔法使いになろうとでも思っているのですか?」
「いや、昨日ハリーポッターを見てしまいつい」
「ついじゃありません」
「アバタゲタブラ」やけくそで一樹は言った。
女史はなにも言わずに帰って行った。
どうやらハリーポッターを見たことも読んだこともなかったようで安心した。
しかし、本当の悪夢は昼休みに起きた