すばらしき出会い
入学式の翌朝、今日子は大学へと向かった。入学式は市の文化会館を借りて行われたので、その大学の学生として門をくぐるのは、初めてだった。
今日子は緊張しながら教室に入った。教室の机の上には学籍番号が書かれたメモが貼りつけられていた。この番号通りに座れということだろう。今日子は自分の学籍番号が貼られた机を探して、席についた。
学生の数はだいたい50名ほど。これで1学年全員だ。
同級生として一緒に大学生活を送る事になる面々を眺めていると、左隣に座っていた女子学生が話しかけてきた。
「初めまして。私、松田里奈。あなたは?」
長い髪をツインテールにした、可愛らしい女子学生だ。女子大生というより女子高生といった雰囲気だが、まだ入学したてなのだからそれも仕方ないだろう。
「私は三好今日子。よろしくね」
他人と話すことに不慣れな今日子だが、松田里奈の楽しげな雰囲気につられて、比較的元気良く答えた。
「こちらこそよろしく!私、実家が遠いから、一人暮らしすることになったの。大学の南門を出てすぐのところにある‘中野ハイツ’ってアパート。今日子ちゃんは?」
「私も一人暮らしだよ。私も南門を出てすぐの‘メゾン伊藤’ってところ。ご近所さんだね」
2人はすぐに打ち解けて、お互いの出身地や趣味、家族のことなど、いろいろとお喋りしていった。小中高とうまく友人を作ってこられなかった今日子にとって、それは初めての経験だった。
里奈は今日子にこんなことを言った。
「私、お父さんに言われたの。大学に行くなら、一生モノの友達を作ってこいって。卒業しても、結婚しても、おばあちゃんになっても、ずっと友達でいられるような。今日子ちゃんとそうなれたら、嬉しいな」
「私も里奈ちゃんと友達になりたいよ!」
すると、今度は今日子の右隣の男子学生が話しかけてきた。その顔立ちからすると、どうやらハーフのようだ。
「楽しそうだね。俺も交ぜて欲しいな。俺は村上将太。高校では‘ショウ’って呼ばれてた。今日から、よろしく!」
こうして今日子は大学に入ってすぐに、里奈と将太という友人を得た。また、それ以外の級友たちともそれなりに親しくなり、今日子の大学生活は小中高のころからは考えられないほど、充実した時間になってくれそうだった。