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消える命。咲く想い

作者: 雅恩

テーマ小説「消」に応募しましたが分かりにくくてスミマセン

『記憶更新』


私『ADEM』は、既に何億と言う回数をこなして来た作業を繰り返す。


続く環境破壊により、人類が地球と呼ぶ大地を放棄してどの位経っただろう。

最後に人間と話したのが当時の暦で約二億年前だ。

名目上私は後に来る生き残りの人類に忘れた歴史を残す為、居るらしい。

しかし、期待された自浄作用も効果無く未だ荒れた大地しか無かった。

何時からだろう『私』が自我を認め、意思が有る事を知ったのは。


『――…よ』


私は、考えに耽っている時に、通信系に異常を感知して、機能の一部を活性化した。


『――…よ』


また、聞こえた。しかし、通信系には反応が無く自己診断も問題は見当たらなかった


私はその声を聞き逃すまいと意識を集中した。


『意思在るものよ』


今度ははっきりと聞こえた。

「何者だ?」


私は外部スピーカーを使い意思疎通を試みる。


すると、私のモニターに一人の老人が現れた。

老人は西暦2000年辺りの時代にあった服を着ていた。


『や〜れやれ、ようやく聞こえたか?』


「何者だ?」


私は警戒レベルを上げ武装のロックを解除した。

『儂は、お主に助言を与えに来たのよ』


『お主は、時の最果てに迷い込んでおる。』


「時の最果て?一体…」


私は自分の中にセットされている時計を見て愕然とした。


西暦2459年―最後の人類が宇宙に飛び立った年だ。


「バカな…」



「ADEM……」


懐かしい声が…私のメモリーに記憶された最後の声が、私に『心』が有る事を教えてくれた。


「イエス…マスター」


最後に離れた―最後まで残っていた私の創造者。

優しい目で私に言う。


「君には、すまないと想っている。君はこれから何千、何万年ここに在り続けなければならない」

マスターは一度区切りと今度は真剣に、まるで我が子に言い聞かせる様に…。

「アダム。何故、君に意志を持たせたか解るか?何故、君に『アダム』と名付けたか?君には、ありとあらゆる命の情報を持たせている。僕は、君独りに全ての責任を押し付けている様にしか思えない!…だから、僕は君に選択肢を与える。今は小さなものかもしれない。しかし、君に本当の意志が芽生えた時、君の助けになる様に……」


「マスター?」

私のモニターがブラックアウトして次に気付いたら元の荒れ果てた荒野が広がっていた。


「私は…眠っていたのか?」


『いいや、お主は過去に行っていたんじゃ』


「しかし、私の時計は正常に働いている」


『なら、お前のマスターも偽物か?』


「………」


私は答える事が出来なかった。マスターは本物だった。そして、私はあの言葉を知らなかった


『アダム』


―マスターと同じ―優しい声で諭す様に


『時の最果ては永い時を生き続け道を見失った者に標を示す。そう言う場所なんじゃ』


「では、あのマスター言った事は本物なんだな?」


マスターは《私の中に全ての命がある》と言った。この老人は私の道を示すと言い、私の中の命は未だ意味を持たない。


『意味を持たす事の出来るのは意志を持った者だけ。お主もそうじゃ』


「私にも出来るだろうか?」

不安が私を襲う。


『出来るではなく、やるかどうかじゃ』

老人の一言が私を後押ししてくれた。


決意した。星を出よう。

「星を出よう」


命を育むため、想いを繋ぐ為。


「御老、私は私の中にある命に意味を持たす為この星を出ます」


『いいのか?』


「はい」


老人は何も言わなかった。私も何も言わなかった。




私は、マスターに最後に教えてもらった場所に行った。


頑丈なエアロックを開き、奥に進むと大きな格納庫に出た。


[EVA](イヴ)

長距離航行用宇宙船の側面に描かれていた文字に私は苦笑した。

【アダムとイヴ】


マスターも意外にお茶目なのかもしれない。






私にどの位出来るのか解らない。

もしかしたら道半ばで力尽きるかもしれない。

もしかしたら人類は戻って来るかもしれない。

しかし、私は私の意志に従い命を育む為行動する。



その日命を繋ぐ為の最後の希望が星を出た。



地上には老人がいや、その姿はみるみる若返り、若い科学者になった。


「頑張れ。アダム」


小さなエールと共に、その姿を見送った




―終―

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