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【第7話】指標
数値は、感情よりも正確である。
《自傷確率:9%》
《社会復帰予測:安定》
《幸福度指標:向上》
理想値に近い数値。
再面談。
「幸福度も上がっています」
「……そうなんですね」
「実感は?」
若者は一拍、間を置く。
「特に、何も感じません」
声は落ち着いていた。
「でも、前よりは楽です」
天城は記録する。
《自己評価:安定》
⸻
帰り際。
「これが、正しいんですよね」
「統計上は」
若者は小さく頷く。
「じゃあ、大丈夫ですね」
目はどこも見ていない。
⸻
センター。
過去ログを開く。
一瞬、読み込みが止まる。
すぐ復帰。
エラーなし。
履歴は正常。
《幸福度:向上》
紬が言う。
「完璧だね」
「ああ」
天城は頷く。
数値は正しい。
予測も外れていない。
すべて整っている。
それでも、
天城は音声ログをもう一度再生した。
「特に、何も感じません」
ノイズはない。
解析結果も正常。
窓の外は晴れている。
予報は外れていない。
幸福度も外れていない。
それでも、
天城は空調の温度を一度だけ上げた。
ログには残らない操作だった。
幸福とは、指標でしょうか。




