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【第5話】揺らぎ
正しさは、揺れないはずだった。
若者のログに、小さな変動が出た。
《自傷確率:13%》
通常値。
数分後。
《17%》
天城は画面を見つめる。
喉の奥が、わずかに乾く。
外的要因は確認できない。
睡眠時間、安定。
通話履歴、変化なし。
《14%》
数値は戻る。
「誤差だ」
紬が横から覗く。
「跳ねたね」
「許容範囲だ」
「うん。でも、跳ねた」
天城はログを閉じる。
「安定している」
紬は何も言わない。
⸻
別件の介入。
中年男性。多重債務。
《債務整理:承認推奨》
《成功予測:82%》
十分高い。
男性は深く頭を下げる。
「お願いします」
承認ボタン。
天城は指を伸ばす。
止まる。
ほんの一瞬。
理由はない。
《82%》
天城は、吸いすぎた空気をゆっくり吐く。
押す。
《承認》
電子音。
「助かりました」
安堵の声。
天城は何も言わない。
⸻
センターへ戻る。
若者の数値。
《自傷確率:15%》
すぐに
《13%》
へ戻る。
「統計上は問題ない」
紬が言う。
「もし、外れたら?」
「外れない」
即答。
紬は少し笑う。
「外れないようにしてる、の間違いじゃない?」
沈黙。
天城は答えない。
誤差は、どこまで誤差でしょうか。




